「ベテランの医師ほど腕がいい」―― 。医療のそんな“常識”を揺るがしそうな分析調査の結果が5月16日付の「英国医師会雑誌」(BMJ)に掲載された。担当医師の年齢と入院患者の死亡率の関連性を米国在住の日本人医師らが分析すると、若手の医師の方が優れた治療成績(医療のアウトカム)を示したという。医療現場での高齢化が進む私たち日本の患者にとっても気になる話だ。患者はどのような医師に自分たちの命を預けるべきなのか。(CBニュース記者 兼松昭夫)

入院患者の死亡率はベテランほど高い
医師の年齢と成績の関連性を初めて分析

 調査は(1)入院患者のみを治療する内科医師「ホスピタリスト」(2)内科医全体(ホスピタリストおよびそれ以外の内科医全て)――計約1万8800人の担当患者が対象。医師の年齢と医療のアウトカムの関係を調べるため、2011~14年に内科系の疾患で緊急入院した65歳以上の患者73万人の「死亡率」「再入院率」「医療費」を、患者の年齢や重症度の違いによるリスクなどを調整した上で分析した。

 その結果、いったん退院した患者がその後、再入院する割合や医療費に大きな違いは見られなかった。しかし、入院30日目までに患者が死亡する割合は、担当医師の年齢が「40歳未満」の場合が10.8%であるのに対して、「60歳以上」が最高の12.1%と、医師の年齢に比例して高まる傾向が認められた。

※患者の重症度(年齢、性別、人種、主病名、27の併存疾患(Elixhauser comorbidity index)、世帯収入、貧困層向けの医療保険であるメディケアに加入しているか、入院した曜日)、医師の特性(性別、卒業した医学部)、入院した病院(病院の固定効果を用いた)で補正した

医師の年齢を連続変数で見ると
60歳を境に患者の死亡率が急激に高まる

 こうした傾向は、ホスピタリストとそれ以外の内科医に共通していた。また、年間での担当患者の多さで医師を3つのグループに分けて、それぞれアウトカムを分析すると、担当患者が少ないもしくは中程度のグループでは、高齢な医師ほど患者の死亡率が高くなった。しかし、担当患者が最も多い3分の1のグループでは、医師の年齢と患者の死亡率に関連は認められなかった。