「リスク」管理ができないと
大きな損失を抱えることも

 ハイリスク・ハイリターンの投資として人気があるのがFX(外国為替証拠金取引)です。日系企業時代の私の先輩は、このFX投資で大きな痛手を被りました。

 なんと、その先輩は総額400万円も損をしてしまったのです。FXとはその名の通り外国為替の取引で利益を得るのもですが、自分の予想が外れて、急激な円高(もしくは円安)になったりすると、大きな損を被ります。

 先輩はオーストラリアドルと日本円との取引をしていたのですが、1豪ドル=100円だったものが、半年で60円を割り込むほどになってしまい、その為替差損を取り戻そうと追加で投資をしてしまい、結局大きな損を出すことになってしまいました。

 この場合は値動きが自分の想定と反対方向に行ったら「損切り」をする(損を確定させて取引をやめる)といったルールを決めておけば、大きな損にはならなかったはずでした。

 もう1人、リスク管理ができずに失敗した人の例を挙げましょう。
 日系企業のある同僚は、相続で数千万円単位のお金を得ました。今まで手にしたことのない大金だったので、自分が運用するのは怖いということで、大手証券会社が運営している「ラップ口座」にお金を預けました。

 これが大失敗でした。ラップ口座とは資産の運用管理を証券会社や信託銀行に任せるサービスのこと。「ラップ」は「包む」という意味の英語から来ており、運用と手数料が一まとめにされていることを意味しています。

 通常、株や投資信託は購入した時、あるいは売却した時に、その売買代金に対して手数料がかかってきます。一方、ラップ口座は、資産残高に対する手数料の割合があらかじめ決められているのが特徴です。たとえば「資産残高の3%」といったかたちで手数料体系が決まっています。

 問題は、儲かっていても損していてもこの3%の手数料は支払わなければならないということ。このマイナス金利時代に安定して年間3%の利益を上げるのはプロであっても至難の業です。

 年間の利益が3%以下だったなら、その年の運用成績は手数料分で赤字になります。赤字でも証券会社はしっかりと手数料を取っているので損はしません。損をするのは個人だけです。

 3%もの手数料を取るラップ口座は、マネーリテラシーのない日本人からお金を巻き上げるための商品です。実際にその同僚がラップ口座に預けた1000万円は、直後にリーマンショックが起こったこともあり、500万円にまで減ってしまいました。同僚はそこで耐えられなくなって全額解約してしまいました。

 しかもこの間、証券会社に運用を丸投げしていたので、運用知識が付いたわけでもなく、ただお金を失っただけ。それならまだ自分で株やFXで運用して損した方が、知識と経験が身に付いただけマシだったと思います。

 お金をふやす時に一番やってはいけないことは、わからないからといって誰かに丸投げすることです。こうなると自分では何も考えなくなり、何も身に付きません。思考停止した人がお金儲けをすることはできません。

 また、一番大事な自分のお金を他人にリスク管理させるのはとても危険な行為です。リスクは自分でコントロールすべきです。

生形大(うぶかた・だい)
1977年8月生まれ 富山県富山市出身。横浜国立大学工学部建築学科卒 横浜国立大学大学院修了。外資系証券(バークレイズ証券・JPモルガン証券)出身の投資家。現在、国内12棟189戸、海外3戸、都内の戸建て・区分マンション4戸の不動産を所有。不動産以外にも株・FX・先物・オプション取引・オフショアファンドなどあらゆる金融商品に精通。現在は資産運用の専門家として独立し、成功者続出の投資家を養成するスクールの運営、不動産投資セミナーの人気講師として、経済的、時間的な自由を志すサラリーマンに指導を行っている。主な出演メディアにサタデープラス(TBS系列)。主な著書に『年収1億円を生み出す[ハイブリッド]不動産投資』(ぱる出版)がある。