納めている年金の保険料。仮に40年間保険料を納めたとすると、もらう年金額は何年分になるのか、ご存じだろうか?

要約者レビュー

『「年金問題」は嘘ばかり――ダマされて損をしないための必須知識』
高橋洋一
222ページ
PHP研究所
800円(税別)

 あなたは自分の年金についてどれだけ理解しているだろうか。また、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」に目を通し、内容を理解している人はどのくらいいるだろうか。2007年頃に世間の注目を集めた「消えた年金問題」はまだ記憶に新しいが、テレビや新聞などでは今もなお、年金制度そのものを危ぶむ報道が盛んになされている。一見、高齢化が進む日本において「自分の老後には年金がもらえなくなるのではないか」という懸念はもっともなように思える。しかし、それは大事な真実を見落としているのだと著者はいう。

 本書『「年金問題」は嘘ばかり』は年金に対する間違った常識を正し、一人でも多くの人の不安を払拭し、安心して長生きをめざしてほしいという著者の思いから執筆された一冊だ。

 著者の高橋洋一氏は、大蔵省(現・財務省)の在籍時から日本の年金制度に関する問題点を鋭く指摘し、より良い制度運営に向けて声を上げ続けてきた人物である。本書では、年金数理に関する複雑な専門用語を最小限にして、年金制度の仕組みをわかりやすく解説している。その論理は非常に明快。読み進めるにつれ、年金に「消費税増税」は不要といった意外な事実がいくつも明らかになり、「なるほど」と膝を打つはずだ。

 年金制度の根幹の部分を理解しておけば、枝葉の情報に惑わされる必要はない。人生100年時代を豊かに過ごすために、「これだけ押さえておくと安心」というポイントが凝縮された一冊として、本書をぜひ読んでいただきたい。(山下あすみ)

本書の要点

(1) 年金は保険であり福祉ではない。将来自分がどれくらい受給できるのかを知ることで、「長生きするリスク」に備えられる。
(2) 年金は保険数理のもと、破綻しないように設計されている。今後高齢化社会で人口が減少したとしても、日本経済が成長を続ける限り、制度を維持できる。
(3) 社会保障のためには消費税を上げなければいけないという理屈は間違っている。本来、年金制度は保険料とその運用だけでまかなわれるものであるため、給付額が増えるなら、保険料を上げればよい。