「人事が全て」といわれる銀行業界。入行年次で頭取以下、組織のピラミッドが形成され、人事評価には減点主義が今もはびこる。その変革を宣言した、みずほフィナンシャルグループの“総帥”、佐藤康博社長・グループCEOに決意の程を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
「銀行産業において、慣行として行われてきた年功序列制度を徹底的に崩す」
5月13日、新たな中期経営計画の発表会見に臨んだ、みずほフィナンシャルグループ(FG)社長・グループCEO(最高経営責任者)の佐藤康博はそう語った。時間に追われる中、人事制度改革に割いた説明は、会見中でもほぼこの発言のみだった。
しかし、その短さとは裏腹に、実はこのセリフは銀行の歴史と文化への“宣戦布告”を意味する大胆発言だった。
「日本の銀行の人事というのは、45歳くらいまではみんな一緒に出世していき、最後にピラミッドのようにそぎ落としていくんです」
「ただ、これだと高い能力を持つ若い人にとっては成長のチャンスが限られてしまう。そこで、30代半ばから後半くらいの年代でも、支店長を含めて上のポストに登用して活躍してもらう考えです」
「それは、年下の上司や年上の部下という年次の逆転現象が出てくるということです。日本の金融機関はこれを嫌がる風土があるわけです(苦笑)。ですが、それをやっていこうと」
「ただし、そうなると年次を逆転された年上の人たちが意欲を失って働かなくなる恐れがあって、それは困ってしまう。また、銀行では50代で行員を出向などで外の会社に出してしまう。そういうことだと、これから若い人たちも数が少なくなってくる中で、もったいない部分もあるわけです」
「たまたま出世街道からは外れてしまったかもしれないけれど、能力も経験もある。だから、しっかりと自分のエクスパティーズ(専門知識・技能)を持っている人には、65歳までちゃんとした処遇と機会を与えて、みずほの中で働いてもらうつもりです。そうすれば、年功序列制度が崩れたとしても、むしろ組織は活性化していくんじゃないかと思います」
佐藤は、中堅までは横並び感の強い銀行のキャリアパスにもメスを入れる。優秀な人材を社内からかき集め、“帝王学”をたたき込む特別プログラムを7月から開始するのだ。