数年前までは、「1円携帯端末」をよく見かけたが、最近はほとんど見ない。携帯電話の端末をただ同然でユーザーに渡し、毎月の通話料で端末の代金を回収するのであるから、ある意味で、キャリアがユーザーに端末をレンタルしているのと同じである(実際には、代理店に販売奨励金を渡して1円携帯を実現していたが、それも含めて通話料で回収していたと考えられる)。一部のガスコンロや給湯設備、さらにはコピー機などもまた、消費者に販売されるのではなく、レンタルされている。なぜ、一部の耐久消費財はレンタルされるのか? 今回は、その理由を検討する。
2期間使用できる財の
1期目、2期目の最適価格は?
単純化のために、(最長)2期間使用できる耐久消費財を供給する独占企業を想定する。また、この財の生産費用をゼロとする。さらに、100人の消費者がおり、この財をもっとも高く評価する消費者は、この財を使用することから、1期間あたり99円(2期間では198円)に相当する効用を得るものとする。2番目に高く評価する消費者は、1期間あたり98円、以下順に、100番目に高く評価する(もっとも評価しない)消費者は、1期間あたり0円に相当する効用を得るとする。
彼らは、余剰(=効用-価格)が非負であれば、この財を1単位使用する。したがって、価格が90円であれば、(90円以上の効用を得る)10人の消費者がこの財を使用するし、50円であれば50人の消費者がこの財を使用することになる。
いま、第1期において、独占企業がこの財を価格100円で販売したとしよう。このとき、1期間あたり50円(2期間で100円)に相当する効用を得る消費者の余剰はゼロであるから、(それ以上の効用を得る)50人の消費者がこの財を購入する。このときの企業の利潤は5000(=100×50)円である。
1期間あたり49円(2期間で98円)以下の効用しか得られない消費者は、第1期にはこの財を購入しない。ただし、第2期になって独占企業は、彼らにたいして(費用ゼロで生産し)財を安い価格で販売することができるし、そうすることによって追加的な利益を得ることができる。