優れたリーダーは、さまざまな方法で人々を動機づける。まず、もっぱら相手の価値観に訴えるやり方で、組織のビジョンを明らかにする。これにより、社員1人ひとりが仕事の重要性を理解する。
またリーダーは、その組織ビジョンを実現する方法を決める際、社員たちも参画させる(あるいは、特定の社員を適宜参画させる)。こうすることで、社員たちは自分たちも組織を管理しているという実感を得る。
ビジョンの実現に努力する社員に手を差し伸べるのも、動機づけの重要な1手法である。コーチング、フィードバック、ロール・モデル(手本を示す)などによって、職業上の成長を後押しし、自信をつけさせる。
最後に、優れたリーダーは、成功を評価し報奨を与える。これにより、社員たちは達成感を覚えるだけでなく、我々が働いている組織は自分たちを大事にしてくれていると感じられる。
以上のすべてが行われれば、仕事そのものはやりがいのあるものになる。
変化に富んだ事業環境にあっては、リーダーは、組織メンバー1人ひとりがリーダーシップを発揮するように動機づけなければならない。これが奏功すれば、組織全体に「リーダーシップの再生産」が起こり、あらゆる階層でさまざまなリーダーシップを担う人たちが登場する。
これは何とも有意義である。ビジネスの複雑な変化に対応するには、大勢の人たちが率先して行動することが求められるからである。これがあって初めてうまくいくといえる(コラム「動機づけ:プロクター・アンド・ギャンブルのリチャード・ニコローシ」を参照)。
もちろん、源を異にする多種多様なリーダーシップが、必ずしも1つに収れんしていくわけではない。むしろ対立しやすい。複数のリーダーシップを機能させるには、これらの人々の行動を慎重に調整しなければならない。ただしそのためには、従来のマネジメントの役割を調整するものとは異なるメカニズムが要求される。
マネジメントに関わる活動が公式の組織構造によって調整されるのと同じく、リーダーシップに関わる活動は、強力なインフォーマル・ネットワーク──これは健全な企業文化の企業で見られる──によって調整される。その大きな違いは、インフォーマル・ネットワークはルーチンではない活動や変革について調整できる点である。