このような学習体験は、リーダーシップに必要なさまざまなスキルや広い視野を身につけるうえで不可欠といえる。また、これらの機会を通じて、リーダーシップの難しさ、そしてリーダーシップが変革を生み出す可能性について学ぶ。

 その後のキャリアでも、同じく重要な出来事に遭遇し、その際これまで以上にさまざまなことに対処しなければならなくなる。

 マネジャーとしてのキャリアはたいてい範囲が限られているものだが、重要な仕事でリーダーシップを効果的に発揮できる人は、その仕事を任される前に、そのような狭いキャリア以上の経験によって成長を遂げている。

 これは通常、従来とは異なる部門への異動や早い時期の昇進によって、さまざまな仕事を経験した賜物である。また、特別なタスク・フォースへの配属、あるいは長期にわたるゼネラル・マネジャーとしての経験が役に立つこともある。

 いずれにせよ、こうして蓄積された幅広い知識は、リーダーシップのあらゆる側面に資することだろう。また、多くのリーダーが社内外に広い人脈を持っている。たくさんの人たちがこのような機会を経験すれば、そこに芽生える人間関係を通じて、強力なインフォーマル・ネットワーク──リーダーシップにおけるさまざまな活動をサポートするうえで欠かせない──が生まれてくる。

 リーダーの育成において平均以上の成果を上げている企業では、比較的若い社員たちにやりがいのある仕事を用意することを重要視している。

 多くの企業では、分権化がカギとなる。分権化とは、組織のより下の層に責任を負わせ、その過程で、そこの人たちにやりがいのある仕事を与えることである。ジョンソン・エンド・ジョンソン、3M、ヒューレット・パッカード、ゼネラル・エレクトリックをはじめ、数々の有名企業が、このやり方を活用している。

 また、これらの企業のなかには、小単位の組織をできるだけ多く設けているところがある。その結果、やりがいのあるゼネラル・マネジメントの仕事が下の層に多数供給されることになる。

 新しい製品やサービスを通じた成長に軸足を置くことで、刺激的なチャンスを別途用意している企業もある。3Mは長年にわたり、上市して5年以内の商品によって、少なくとも売上げの25%を稼ぎ出すという方針を掲げてきた。このおかげで、小規模の新規事業が多数生まれ、また同じ数だけ、リーダーシップの潜在能力が高い若手社員たちに力試しと成長のチャンスが与えられる。