さまざまなコミュニケーション・チャネルを通じて結びついた人たちの間で信頼が築かれているおかげで、メンバー同士が良好な関係を維持し、変化に適応できる。また、個々の役割の間で対立が生じても、こうした関係があれば、衝突も解決しやすい。

 おそらく最も大切なのは、このような対話と協調のプロセスから、現実離れしているばかりか相矛盾しているビジョンではなく、相互に結びつき調和の取れたビジョンが生まれてくるという点である。

 その調整には、マネジメントの役割を調整する場合に比べて、おしなべてコミュニケーションをより充実させる必要があるが、公式な組織構造ではなく、強力なインフォーマル・ネットワークがあれば、これに対処できる。

 どのような企業にも、多かれ少なかれ、非公式な人間関係は存在する。しかし、そのネットワークは、多くの場合、とても弱いか(結びつきが強いのは、ごく1部の人々のみで、それ以外はそうではない)、バラバラに存在している(マーケティング部門やR&D部門には強力なネットワークが存在するが、両者にまたがるリレーションシップは存在しない)。このようなネットワークでは、リーダーシップ活動が後押しされることはない。

 実のところ、広範囲にわたるインフォーマル・ネットワークはきわめて重要であり、それがない場合、数あるリーダーシップ活動のなかでも、その構築にいち早く取り組むべきである。

リーダーシップ重視の文化を醸成する

 事業の成功においてリーダーシップの重要性が高まっているにもかかわらず、実際には、大半の人たちがリーダーシップに求められる資質を実際の仕事のなかで開発することを怠っているようだ。とはいえ、リーダーとしてもマネジャーとしても秀でた人材を育成し続けている企業もある。

 リーダーシップの潜在能力が高い人材を採用するのは、その第1歩にすぎない。同じく重要なのが、彼ら彼女らのキャリア・パターンを管理することである。

 リーダーシップの役割は広範囲にわたるが、これを効果的に発揮している人たちのキャリアは、えてして共通している。最も一般的で何より重要なのが、キャリアの早い段階で大きな試練に遭遇していることだろう。たいていのリーダーが、20代か30代に、リーダーの役割を果たそうと努力し、リスクを背負い、成功と失敗から学習するという機会を経験している。