財務省は今年も埋蔵金を差し出す?概算要求100兆円超見込みで財源確保に腐心する財務省は、自治体の埋蔵金(財政調整基金)にも目を向け始めている Photo by Ryosuke Shimizu

「ひとたび上げてしまった生活水準を、元に戻すのは難しい」。その言葉は、一般人の日常生活だけでなく、どうやら国という大きな組織においても当てはまるようだ。

 霞が関の中央官庁が、毎年8月末までに出す翌年度予算の概算要求額。政府は予算編成の起点となるその基準(概算要求基準)を7月下旬に示したが、そこに上限額の記述は今年もなかった。

 概算要求基準は、過去には天井を意味するシーリングと呼ばれ、歳出の上限額を設定していた。金額が野放図に膨らんでしまい、財政規律が緩むことがないようにするためだ。

 シーリングが示されるこの時期は、永田町や霞が関の至る所から、半ば儀式のように「なぜ(予算の)歳出にキャップをはめるんだ」という不満の声が漏れる。かつて限られた枠の中で、いかに効果的に予算を配分し要求額として積み上げていくかに、政治家や官僚が必死になって知恵を絞っていた。だが今や、その光景を懐かしむような状況にあるわけだ。

 上限設定を見送ったことで、概算要求の総額は5年連続で100兆円を超えそうだ。だが、今年はそうした財政規律が緩み切った予算編成を、政府として無傷で終わらせることは難しいかもしれない。

 なぜなら、足元で税収が減り始めているからだ。2015年度までは景気拡大による税収増が続いており、国としての収入が増えた分、歳出(支出)が膨らんでも何とか言い訳ができた。ところが、16年度は国の税収が前年度比1.5%減と7年ぶりに減少したため、今年はそれが通用しないのだ。