サバの危機を救うため
新たな養殖事業に挑戦

小浜市の鯖プロジェクト

 日本で食用魚を養殖しようとすると、高いエサ代の問題に突き当たる。農林水産省の「漁業経営調査報告」によると、ブリ類養殖業の収入に占めるエサ代の割合は60〜70%。極めて高いエサ代のために、魚を生産すればするほど赤字に陥るという悪循環が、日本の養殖業を苦しめているという。

 問題の原因がエサ代にあることを突き止めた右田社長は、ある日、島根県の離島で大量の魚が廃棄されている事実を知り、養殖のエサに加工することを考案。同時に小浜市との取り組みのなかで浮上した「酒かす」と、捨てられる魚を混ぜて育てる「よっぱらいサバ」の発想につながっていった。

「実際に捨てられている魚は、いま食べられている量の9倍以上とも言われていて、単純にエサにすればいいんじゃないか、と思ったんです。ただし、魚はビタミンB1が欠乏すると死んでしまいます。そこで、ビタミンB1の含有量が多いものとして着目したのが酒かすでした。鯖街道の入り口である福井県の米を使い、終点にあたる京都市で仕込んで酒にしてもらう。その工程で出る酒かすをエサに混ぜればブランディングの面でも面白いんじゃないかと。アイデアはPRプロデューサーの殿村先生からいただき、よっぱらいサバと名付けてもらいました」

 これまでなら捨てられていた大量の魚と、副産物として出る酒かすを活用し、養殖用のエサを開発して適正価格で販売する。この取り組みは今、官庁や行政、大学、研究機関をも巻き込み、本格的な研究開発チームが立ち上がっている。

 同時に、右田社長が進めているのが「クラウド漁業」だ。クラウド漁業とは、クラウドファンディングで調達した資金で稚魚を買い取り、市場価値のある550グラムを超える大きさにまで魚を育てること。稚魚の買い取り価格は、市場価格の20倍を予定しているという。今回、パートナーとして提携したのは、魚介卸売り界のベンチャー企業フーディソンで、同社が運営する鮮魚店やECサイトでも取り扱う。

 クラウドファンディングと漁業を結びつけたまったく新しいビジネス。一度説明を受けただけでは分かりにくいスキームのように思えるが、本来の目的は何なんだろうか。