「漁業者の所得を上げ、後継者不足を解決しようというのが、そもそもの発想でした。魚の乱獲によって所得を上げようとする漁業者自身が、漁業の仕組みを変えるというのは難しいわけです。一方、消費者も安い魚を追い求めるのではなく、漁業に興味を持ってもらうことが大切。消費者自身がクラウドファンディングを通じて投資し、漁業と養殖を体験したり、育てたサバを食べたりして応援することが漁業を変え、水産資源を守ることにつながります。まずは、その概念を伝えていきたいんです」と、右田社長は新たな養殖事業への思いを熱く語る。

 つまり、クラウド漁業とは、魚を取る段階から育てて買い取り、食べるまでの過程を一気通貫につなぐことで、「魚の価値を上げる漁業」と言い換えることができる。SABARは、最終の受け皿となる飲食店として参加。店の価値を高めることで結果的にファンが増え、売り上げアップも図れるというわけだ。

「よっぱらいサバ」で
1億円超えの資金調達なるか

小浜市で進められるサバの養殖 Photo by H.H

 クラウド漁業の第1弾が、3月8日のサバの日にスタートした「鯖街道よっぱらいサバファンド」である。今回の募集総額は、なんと国内最高額となる1億1380万円。1口2万5000円で出資を募り、調達した資金は、新店の開店と既存2店舗の改装、4年間継続的によっぱらいサバを仕入れるための費用にあてられる。先述の阪急三番街店はその第1号店。小浜市にも新店がオープンする予定だ。

 これまでとはケタ違いのプロジェクトだけに進捗状況が気になるところだが、「実は今、足踏み状態なんです」と、右田社長は打ち明ける。ハードルは高い方がいいと記録をめざしたが、「読みが甘かったのと、まだ本気で取り組んでいないのかもしれないと反省している」と言う。

 とはいえ事業を実現するには、残り2ヵ月で目標の半分に達しなければならない。そのため、これまでアプローチできていなかった月間3万人の来店客にも、クラウド漁業への参加を呼びかけている。例えば「鯖を守る会」など、ファンを拡散していくためのグループ作りにも着手。「これこそサバつながりを信じて、泥臭いことをやっていく」と、右田社長は決意を新たにする。

 信念がぶれず、一心不乱にやりつづける右田社長のベンチャー精神は、いまや大手企業の経営者の心も動かしている。右田社長の夢は、「教科書に名前が載るような企業に育てること」。サバについて熱く語る姿を見ていると、そんな野望も実現可能なのではないかと思えてきた。