11月22日に発売された「ミシュランガイド東京」を当日に手に入れた。15万部もの初版部数だったと聞くが発売初日で完売に近い状態のようで、グルメ情報に熱心で、且つ国際的な権威には極めて弱い日本在住者を主なターゲットにこの本を出した戦略はビジネス的に「当たり!」と言えるだろう。
もともと東京は、世界の美味しい料理が揃っている街だと思う。お金と時間と体調が許すなら、世界で一番食べ歩き甲斐のある都市といってもいいのではないか。とはいえ、日本人が威張る必要はない。東京のレストランが、有力な国際的尺度で一応は共通の基準を目指して評価されるようになったことを素直に喜べばいいだけだろう。
とはいえ、ミシュランガイド東京の最初の出来には、個人的に少々不満があることも付け加えておこう。調査が始まったばかりで、星の数に納得が行かなかったり、ここは美味しいはずなのにと思う店が洩れていたりすることは、初回だから気にしないとしても、料理の良さよりも料理人や店の歴史に偏った記事の内容は、ガイドブックとしての実用性を減じている。歴史や店構えよりも、もっと料理について知りたい。この辺りの記述の隔靴掻痒感は、投信評価機関や年金運用コンサルタントの運用会社に対する「定性評価」なるものが、結局運用会社の大きさと組織体制に偏り勝ちで、ユーザーの参考にならない様子と似ていると思った。
また、はっきり言って申し訳ないが、写真の出来が悪い。店の許可を取って身分を明かしてからの取材で撮っているはずの写真だが、画質も今一つだし、取り上げた皿の資料性も不十分だ。日本のグルメガイドの水準はもう少し高いことを認識して次年版からは改めて欲しい。
ただし、紹介している店全てに敬意を払った記事を書いている点は感じがいい。今回は食い足りなかったが、王者のコメントとはこんなものなのか。幸い、「辛口」で有用な情報源はネットと書籍、両方の世界に多数ある。