震災後は「命を守る器」である住宅について、しっかり「安心・安全」を確保したいというニーズが高まっている。家族の絆を重視し、生活基盤となる住まいの快適性や環境性能を求める人も増えている。住宅市場の新しい動きの中に、次のトレンドが見え始めた。 

即日完売物件も続出
活況を呈する首都圏マンション事情

水面下のマグマが噴き出し始めた

「地震があったから湾岸エリアの人気が落ちたとか、高層ビルから客足が遠のいたという話をする人もいるが、実際に物件はちゃんと動いている。買う人はよく調べ、しっかり買っている」と話すのは、東京都下のマンションモデルルーム販売員。

 東日本大震災という未曽有の災害は、東北地方に甚大な被害をもたらしただけでなく、日本中に、経済的にも、心理的にも、大小さまざまな影響を与えた。住宅分野については、変化の全容はまだ明らかになっていない。ただ、住宅購入のマインドに変化が生じ、それが今後の市場動向に影響を与えることは確実と見られている。

【図1】 拡大画像表示

 冒頭のコメントのように、「地震が起きたからマンションが売れない」といった風評被害の類は、ほぼ落ち着いてきた。

 もちろん震災後は自粛ムードにより、モデルルームや住宅展示場からぱったり客足が遠のいた時期が約1ヵ月続き、先が読めない状態だった。しかし4月中旬、ゴールデンウイークに入る直前から、あちこちで動きが出始めた。

 マンション販売の大手、長谷工アーベストの顧客マインド調査によると、5月時点で「震災の影響を感じていない」と答えた人は4割に上る(図1参照)。

  さらに「今は住宅の買い時だと思う」と答えた人に、その理由を尋ねたところ、引き続き「低金利」「低価格」「税制」の3要素を挙げる声が多かった(図2参照)。

 消費マインドの回復を裏づけるように、首都圏マンション市況を見ると、5月、6月には、早くも圧倒的人気で即日完売する物件が出てきている。

 売れている物件を詳細に見ると、低価格帯よりも、高額マンションがよく売れている実態が明らかになった。決して「安いから売れている」のではないのだ。

 震災後はさまざまな動きが見られたが、もっとも速い反応を見せたのが、資金的に余裕があるこうしたアッパー層。続いて郊外の3000万円台の一次取得者向けファミリータイプマンションも、比較的早い時期から動き始めた。