アサヒグループホールディングス社長 泉谷直木<br />面展開重視のM&Aで<br />海外事業の成長を狙うPhoto by Masato Kato

 ──ニュージーランドのインディペンデント・リカー(IL社)を976億円で買収するなど、オセアニアでのM&Aが相次いでいる。

 一連の買収に総額1991億円を投じたことで、オセアニア事業の売上高は1077億円に達した。

 グループのネットワーク、“面展開”でどんな成長戦略を描けるかを、M&Aでは重視している。

 たとえば豪州飲料2位のシュウェップスと3位のP&N、豪州・ニュージーランドの低アルコール飲料で圧倒的トップシェアのIL社が一体となると、エリアで上位シェアを握ることができる。小売りへの発言力や価格コントロール力が強まり、事業収益性も上がる。幸いなことに、製品ポートフォリオは各社で異なり、新しい会社として強みを存分に発揮できる。

 また、IL社はオセアニア地域で15の工場と27の物流拠点を持つ。このインフラを前出の3社で共同で活用できることも魅力だ。

──豪州では、ビール最大手のフォスターズの買収合戦が話題だ。資本提携関係にある中国の青島ビールも名乗りを上げた。関心は。

 豪州のビール市場は(キリンHDが買収した)ライオンネイサンとフォスターズの2社による寡占で、シェアも動かず成熟状態だ。

 買収価格もつり上がり、1兆円もの資金が必要になるとも見られている。のれん代だけでも4000億円以上はいく。これが万一、減損でもしたらダメージは巨大だ。仮に高値で買えても、成長戦略が描きにくく、参戦には慎重にならざるをえない。