◇豊富な文化財に恵まれた、サブカルチャーを担う街

 「こういう素晴らしいものがある」と見せたら、みんなが納得して同意する。こうした能力の有無が文化国家になるかならないかの違いである。著者は、素晴らしいものを自分で感じ取る力を育むうえで、京都に来ることを推奨している。本物の文化財や歴史を感じさせるものが、京都には豊富にあるからだ。

 また、京都は老舗が多い一方で、ベンチャー企業が多いことでも知られている。京セラやオムロンなどのIT関連企業も多い。任天堂も京都で創業した会社の一つだ。著者は、地方で気の利いた人が頭を使うからベンチャー企業ができると考えており、今の日本は何事も都市部に偏りすぎているという。

 また、京都は学生が多い街でもあり、彼らがサブカルチャーの担い手になっている。新しいものに対する好奇心と若者の感性。これらを両方備えているからこそ、京都はサブカルチャーとの親和性が高いといえる。

一読のすすめ

 本書は、都市の構造や京都人の言葉や習慣などを踏まえながら、著者ならではの感性をもとに、京都の壁を解説した一冊だ。京都という都市の独自性を考える素材がふんだんに盛り込まれており、本書を読めば、京都を訪ねる楽しさがいっそう増すことだろう。新たな京都を発見していただきたい。

評点(5点満点)

著者情報

養老孟司(ようろう・たけし)

 1937年鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し、同大学名誉教授に。心の問題や社会現象を、脳科学や解剖学などの知識を交えながら解説し、多くの読者を得ている。2006年京都国際マンガミュージアム館長に就任。2017年より同名誉館長。『からだの見方』(筑摩書房)でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮新書)が400万部を超える大ベストセラーに。

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