家電量販店各社の8月の売上高が急落している。

 家電エコポイント制度が終了した今年3月以降も、東日本大震災による節電機器への関心の高まりや、7月下旬の地上デジタル放送への完全移行(東北3県を除く)に向けた薄型テレビ需要などにより、多くの企業では前年比1~2割の増収基調が続いていた。

 だが、8月の各社の売上高(全店ベース)を見ると、ヤマダ電機は前年同期比72.1%、エディオンは64.56%、ケーズホールディングスは77.5%、ビックカメラは80.2%、コジマは65.9%、ベスト電器は73%。いずれも約20~35%もの大幅減収という惨憺たる状況だ。

 地デジ特需の反動で、テレビの売上高は前年比で4割前後に減少しているのは仕方がない。問題なのは、他の多くの商品も下落していることだ。

 商品別の月次売上高を公表しているコジマ、ケーズ、エディオンを見ると、エアコンは前年同期比で4~6割。パソコンは8~9割、冷蔵庫は7~8割。

「飛車角の商品が軒並み大転落した」(業界関係者)という異常事態だ。

 さらに今秋から年末にかけても、昨年12月の家電エコポイント減額を前にした駆け込み需要の反動から、大幅に落ち込む可能性が高い。大手各社では、出店計画の見直しなどに乗り出す模様だが、業績の大幅悪化は避けられそうにない。

 とはいえ、家電量販店業界の苦境は今に始まったことではない。リーマンショックが起きた2008年秋以降、店舗網の飽和や個人消費の低迷により、再編機運が高まった。

 実際、08年10月にはベスト電器がビックカメラの持ち分法適用会社となり、同月にはパソコン専門店の九十九電機が民事再生法適用を申請。09年2月には石丸電気がエディオンに吸収合併された。さらにコジマにも再編の観測が囁かれた。

 ところが、リーマンショック後の景気対策として09年5月から家電エコポイント制度が始まり、一気に息を吹き返すと、大手家電量販店の多くは、筋肉質な体質を築くどころか、新規出店で規模を拡大し続けた。

 経営環境が厳しいことに変わりはない。加えて、中長期的に見ても、人口減少により国内市場の成長は見込みづらい。政府はエコポイント制度の復活を検討しているが未だ流動的だ。その行方次第で、先送りにされた業界再編が、再び始まる可能性は高い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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