ハーバード大学の知日派教授と聞いて誰もが真っ先に思い浮かぶのは、エズラ・ヴォーゲル教授だろう。1979年に出版された『ジャパン アズ ナンバーワン: アメリカへの教訓』は日本国内で70万部を超えるなど、世界的な大ヒットを記録した。日本、中国、アメリカという三つの国を社会学の観点から徹底的に研究しつづけてきたヴォーゲル教授に、日本が世界に与えた影響とトランプ政権の今後についてうかがった。話題の新刊「ハーバード日本史教室」からお送りする。(2017年4月14日 マサチューセッツ州ケンブリッジにてインタビュー)

ジャパン・アズ・ナンバーワン

佐藤 1979年に出版された『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は、日本で大ベストセラーになりました。本国アメリカではどのような反応でしたか。

ヴォーゲル 日本での反響に比べると、アメリカでの反応は限定的でしたが、それでも先見的な経営者、知識人、政府関係者などから、「日本の強さの源泉がよくわかった」という感想をもらいました。

エズラ・ヴォーゲル名誉教授

 1970年代後半は、ちょうど日本製品がアメリカを席巻している時期でしたから、「なぜ日本の製品はこれほどよく売れるのか」ということに対してアメリカ国民の興味が高まっていました。当時、日本の強さを社会構造から分析した本は出版されていませんでしたから、エリート層が強い興味を持ったのだと思います。ただし、一般の人々にはそれほど受け入れられなかった印象があります。「アメリカのほうが進んでいるのだから、日本から学ぶ必要などない」と日本に対して反感を抱いていた人が多かったからです。

佐藤 1980年代、「ジャパンバッシング」(日本叩き)の嵐が吹き荒れ、日本車や日本製品をハンマーで叩いて壊すといった光景が数多く見られました。この本が出版されたのは、その少し前ですが、なぜ、この時期にあえて日本を賞賛する本を出そうと思ったのでしょうか。