コンセプト作り
2つの鉄板パターン

 「思い」を言語化し、そして事業機会(マーケット)をとらえる。この2つのプロセスを得て事業コンセプトが決まっていくことになる。大きな手順は第2回と今回で紹介したとおりである。最後に、鉄板のビジネスのパターンを2つ紹介する。

 1つは、「脳」か「心臓」を握るパターンである。長く続くビジネスはほぼすべて、人間の中毒性に根付いている。タバコなどの嗜好品や、ゲームがそうである。中毒こそが利益の根幹を握っており、人間の脳に訴求しているともいえる。

 「心臓」を握るパターンの例として、最もコアな技術の知的権利をライセンシングして、ブラックボックス化した製品を開発・販売する会社がある。ソフトバンクが2016年に買収したARMSがそれにあたる。ARMSはIoT時代のプロセッサの中枢技術を握る企業である。

 もう1つは、中心部を握るのではなく、全体をつなげるモデルである。上流から下流までつなげることによって利益を作り出す。たとえばトヨタがそうである。新幹線のシステムもこれに近い。車両だけでなく均質で正確なオペレーションを実行するまでがビジネスモデルである。

 規模の経済を狙うためベンチャーが参入するのは難しいが、宇宙開発事業のように、これからできる産業のなかで、エコシステムの一部として入り込むことならできる。

儲かるビジネスは「脳」と「心臓」を握る

山口揚平(やまぐち・ようへい)
早稲田大学政治経済学部(小野梓奨学生)・東京大学大学院修士。1999年より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと、独立・起業。企業の実態を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し、証券会社や個人投資家に情報を提供する。2010年に同事業を売却したが、のちに再興。クリスピー・クリーム・ドーナツの日本参入、ECプラットフォームの立ち上げ(のちにDeNA社が買収)、宇宙開発事業、電気自動車(EV)事業の創業、投資および資金調達にかかわる。その他、Gift(ギフト:贈与)経済システムの創業・運営、劇団経営、世界遺産都市ホイアンでの8店舗創業(雑貨・レストラン)、海外ビジネス研修プログラム事業、日本漢方茶事業、医療メディア事業、アーティスト支援等、複数の事業、会社を運営するかたわら、執筆、講演活動を行っている。専門は貨幣論、情報化社会論。 NHK「ニッポンのジレンマ」論客として出演。テレビ東京「オープニングベル」、TBS「6時のニュース」、日経CNBC放送、財政再建に関する特命委員会 2020年以降の経済財政構想小委員会に出演。慶應義塾高校非常勤講師、横浜市立大学、福井県立大学などで講師をつとめた。 著書に、『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』(ランダムハウス講談社)『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座』(日本実業出版社) 『世界を変える会社の創り方』(ブルー・マーリン・パートナーズ)『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』(アスキー・メディアワークス)『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』(ダイヤモンド社)『10年後世界が壊れても君が生き残るために今身につけるべきこと』(SBクリエイティブ)などがある。