マーケティングソフトウェア企業のマルケト(Marketo)が創業10周年を迎え、米国本社からフィル・フェルナンデスCEOが7月に来日。起業から現在までの成長の道のりと、電撃発表されたファンドへの株式売却の意図、そしてデジタルマーケティングの未来について語った。

営業部門はマーケティングの力を
必要としている

マルケトのフィル・フェルナンデスCEO Photo by DIAMOND IT & Business

――今回来日し、自社イベントで講演されての印象は?

 とても驚きました。ビジネスのマーケティング活用の分野はまだ早期の段階と思いますが、日本のビジネス層の多くの方があれほどの熱意をもって参加してくれたことに感激しています。まさに日本の市場でマルケトが成功しているということを確信しました。

 米国で創業して10年、マルケトの導入企業は世界で4600社、日本では300社という状況ですが、日本では多国籍企業の関心も高い一方で、同時に国内専業の企業の引き合いも旺盛です。市場は全体として進展しています。

 2014年に日本市場に参入した当初、時期尚早と多くの人に言われました。その証拠に競合他社も様子見をしていましたから。しかし、結果的に我々は、先行して参入することで日本の顧客の見方、顧客のさらに先の最終顧客の行動を知ることができたのです。

――なぜ日本のデジタルマーケティング市場にいち早く参入したのですか。

 日本進出には勝算がありました。なぜなら日本の最終顧客の行動は先進的だったからです。携帯電話からスマートフォンへの移行も早く、デジタルテクノロジーやソーシャルの利用も早かった。このような先進的な市場では、デジタルマーケティングの技術も浸透する準備が整っていると判断し、早期に参入をしました。

――今回のイベントでも、マーケティングはセールスのサポートにとどまらないというメッセージを発信していました。その一方で、マーケティングは顧客からフィードバックが得られにくいから、やりすぎてはいけないという意見もあります。営業とマーケティングをつなぐには、何が足りないのでしょうか

 同じことを10年前の創業時に米国で言われていました。当時は「営業はマーケティングの力を必要としてない」という声が多かったのです。しかし我々はそれを覆し、マーケティングはセールスに必要だということを我々のビジネスが成功することで実証しました。

 いったん、顧客の成功事例が生まれると、それが他の企業にも口コミによって影響を与えます。好循環が拡散して、さまざまな業種でマーケティングデータの活用が進んだ。それがこの10年です。

――経験や勘、人間関係といった営業の定性的な要素は必要なくなったと?

 そうではありません。セールスとマーケティングはお互いに教えあい、協力しなければいけないのです。

 最終的には営業は自らの営業目標の達成のためになにができるかを考え、それによって利益を上げたいと考えています。マーケティングがその助けになるのであれば、その時点で自分たちの意見を変えて取り込むべきですし、実際にそのような企業が増えています。

 ですが、とくにB2Bの分野ではマーケティングにかかわる人たちの組織はまだ極めて小規模だと言わざるを得ません。日本でも「マーケター」と呼ばれる人の数は少なく、すべての営業部員をサポートするには不足しています。まだまだ、マーケティングの重要性を啓蒙しなければいけないと感じています。