11月5日、ドナルド・トランプ米大統領が初来日した。政府はトランプ大統領を、事実上の“国賓”として扱い、天皇陛下との会見や安倍総理と計4回の食事をともににするなど、手厚い待遇でもてなした。
そうした厚遇の背景には、安倍政権として北朝鮮に対して日米の緊密な連携を誇示するだけでなく、トランプ大統領が強行に進める米国の貿易赤字削減交渉の矛先を和らげる狙いも大きかったと考えられる。
今回のアジア歴訪を通してトランプ大統領は、米国の貿易不均衡を是正することが一つの命題になっていた。そのため、米国に有利な条件を、わが国や中国から引き出すことが重要な目的だったはずだ。
貿易赤字は、大統領自身の政治生命の“命綱”というべき、白人労働者階層の支持をつなぎとめる大切な材料だ。具体的には、米国に有利に働くようなFTA(自由貿易協定)交渉を求めることである。それはまさに、米国の利益を第一に考え、トランプ大統領の支持層に恩恵をもたらす“アメリカファースト”への取り組みに他ならない。
今後、トランプ大統領は米国第一の主張をより強める可能性が高く、「グローバル経済の発展」を重視した行動は期待できないだろう。
むしろ、FTA交渉を求める米国は、主張をますます強める可能性がある。わが国は、そうした要求をうまくかわしつつ、アジア各国を中心に“親日国”を確保し、国際社会での発言力を高めることにエネルギーを注ぐ必要がある。
強硬にFTA交渉を進めたい
トランプ大統領
トランプ大統領訪日を前にした10月16日、麻生副総理(財務大臣)とペンス米副大統領が、第2回目の“日米経済対話”を開いた。この場で米国は日米間のFTAに強い関心を示した。前回4月の経済対話ではFTAが議論に上がらなかったことを考えると、わが国に農畜産分野等での市場開放などを求める米国の考えは、一段と鮮明になっている。