東アジアサミット(EAS)が、11月19日にインドネシアのバリ島で開かれた。
この会議はASEAN10ヵ国と日中韓の3ヵ国、それにオーストラリア、ニュージーランド、インドの計16ヵ国で2005年に発足。今回から米国とロシアが正式参加して計18ヵ国となった。
近年は定例化した国際会議が数多く、何のために集まっているのかわからない形だけの会議も少なくない。
だが、今回の東アジアサミットは期待以上の成果を挙げた有意義な会議であった。
特に、中国とASEAN諸国の間で島の領有権争いのある南シナ海問題を俎上に上げ、結束して中国に迫った意味は大きい。
「南シナ海問題」でASEAN諸国が結束
米参入により中国はかつてない守勢へ
言うまでもなく、東シナ海、南シナ海を通ってインド洋に抜けるシーレーンは、日本ばかりでなく、多くの国にとって最重要な海上交通路。日本の国内で言えば東名高速道路のような大動脈だ。
もしこれが安全でなくなれば、遠く太平洋を通らなければならない。東名も中央道も不通で北陸を迂回するに等しくなる。
事情は、極東ロシアや韓国、ASEAN諸国も同じこと。オーストラリアもニュージーランドもインドも海上輸送にとって深刻な問題だ。もちろん、東側しか海に面していない中国にとっては、南シナ海が“核心的利益”に関わることも理解できる。
米国は、イラク、アフガニスタンがひと区切りついたとしても、アジア太平洋地域の経済や安全保障を最優先課題とすると宣言。政策の大転換に踏み切った。南シナ海問題は、アジア重視の米国にとっても最重要の問題になったのである。
この問題に対する米国の原則は、(1)航行の自由、(2)通商の自由、(3)問題の平和的解決の3つである。この原則を大上段に掲げてオバマ大統領はバリ島に入った。
オバマ大統領は、インドネシア育ち、ハワイ出身だから、“太平洋”に対する思い入れは、他の米国大統領とは大きく違っているだろう。東アジアサミットに参加しても、他人の家に来るような気はしないのかもしれない。
19日の首脳宣言は、この案件について次のように述べている。
「海洋に関する国際法が、地域の平和と安定の維持のために必要な規範を含むことを認識」
何ともまわりくどい表現だが、会議での南シナ海問題に対する各国首脳発言はもっと強いものであった。