モデル就業規則の変更で、副業容認の議論が加速しそうだ。「転職リスクを増大させるので、副業容認により転職予備軍の寝た子を起こしてはならない」という定説があるが、実は、副業容認は逆に転職リスクを低下させる。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口 博)

副業容認の議論が加速!?
副業は転職リスクを高めるのか

人事部が怯える「副業容認で転職リスク増大」の嘘人材流出を防ぐために、社員の副業を禁じたり、メディアへの露出を避けようとする企業は多いが、デキる社員であればあるほど、活躍の場を狭めることで、逆に外に出て行ってしまう

 厚生労働省が企業に示しているモデル就業規則が、副業を容認する内容に変更になりそうだ。

 同省が有識者検討会で改定案を示したという。これまでもロート製薬やリクルートなど副業を容認したり推進したりしている企業はあるものの、その数はごく限られている。

 大多数の企業は副業を禁止しており、副業容認の検討すらしていなかった。今回のモデル就業規則の改定が、副業を容認するかどうかの議論を加速させるに違いない。

 中小企業を対象としたリクルートキャリアの調査によれば、副業を禁止している理由は、過重労働の助長(55.7%)、情報漏洩リスク(24.4%)、労働時間管理・把握が困難(19.3%)、労働災害時の本業との区別が困難(14.8%)、人材流出(13.9%)、業績不振と見られる風評リスク(4.9%)の順だ。

 逆に副業を容認している理由としては、社員の収入増(26.7%)、本人のスキル向上(5.0%)、定着率の向上(3.8%)、多様な人材の活躍(3.4%)、社外の人脈形成(2.3%)、リーダシップ醸成(1.1%)などが挙がっている。副業禁止理由として人材流出が13.9%であるのに対して、副業容認理由として定着率の向上が3.8%にとどまっている。副業は転職リスクを高めるという見方が大方のようだ。

 実際、大手企業の人事部長たちと話をする中で得た私の肌感覚としては、やはり副業容認が人材流出を加速するのではないかと考える人が多いようだ。大手企業が副業容認に踏み出すことについては、依然、ハードルが高いと思えてならない。

 すなわち、ひとたび副業を容認すると、副業先でパフォーマンスを上げる→副業先で重用されキャリアが築ける→副業先が主たる業務となる…という具合に、いつの間にか副業が本業になってしまうケースだったり、副業先でスキルが向上する→転職市場での価値が上がる→転職する…というようになったりすることを怖れているというのだ。