日馬富士の貴ノ岩に対する暴行傷害事件での、日本相撲協会の対応が不可解だ。人事マネジメントの観点からは、トンデモな対応をしていると言わざるを得ない。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口 博)
当事者一方の見解を鵜呑みにする
人事マネジメントは信頼を損なう
日馬富士による貴ノ岩への暴行傷害事件が連日メディアを賑わしている。貴ノ岩サイドは鳥取県警による捜査中であることを理由に、日本相撲協会の聴取に応じない。一方、日本相撲協会は、日馬富士やその場にいた力士などから聴取を行い、中間報告を行った。また、日馬富士は早々と引退届を提出し受理された。
報道内容を見る限り、私には日本相撲協会の対応が不可解でならない。人事の観点から見ると、トンデモな状況だと言わざるを得ないのだ。
最も理解に苦しむことが、日本相撲協会の危機管理委員会が、いわば加害者側の聴取を鵜呑みにした中間報告をしていることだ。もちろん、中間報告であり、最終報告は異なる内容になるかもしれないが。
しかし、だからといって良い対応とは言えない。マネジメントする側が、加害者・被害者双方の言い分を聞かずに、一方の言い分のみを聞いた段階で見解を表明するのは大問題だ。それを行った時点で、マネジメントは「組織メンバーに対して公正な取り扱いをしていません」「当組織のマネジメントは不公正です」と宣言しているようなものだ。
一般企業で懲戒処分をせざるを得ない時、人事責任者が一方の当事者のみの事情や聴取内容を鵜呑みにして発言したら、人事の信用は失墜し、その後、人事は機能しなくなることだろう。