「最大の努力で何とか達成できること」に取り組む

 数多くのやりたいことのなかから、何に情熱を注ぎ込み、何をあきらめるかを、どうやって選別すればいいのだろう?アルバート・アインシュタインはこんなアドバイスをしている。

「『最大の努力をすれば何とか達成できること』に取り組め」

 アインシュタインはこれを、現時点の能力をはるかに超える難しい問題に取り組もうとしていた物理学の学生に宛てた手紙で書いている。そして、いまの自分より少し上のレベルの問題に挑戦するように助言した。

 無理をして能力以上のことに挑戦してしまえば、失敗するのは目に見えている。アインシュタインの最大の仕事である相対性理論の発見も、世界5ヵ国の5人の科学者(ポアンカレ、ミンコフスキー、マッハ、ローレンツ、マクスウェル)の重要な発見を基盤にしている。アインシュタインの偉業は、このパズルのピースを組み合わせたことだった。そのピースそのものは他の誰かが見つけたものだった。

「人生戦略」をマップにする

 本書『超、思考法』では、物事には「自分でコントロールできること」と「できないこと」があるということを前提にしながら、私たちが人生で何に情熱を注ぐべきかを考える際に役立つ実用的なツール、「人生戦略マップ」を紹介する。

 このツールは、「やりたいこと」「目標」「行動」「障害」についての自分の考えを整理するのに抜群の効果を発揮する。

 これは、既存の目標についての行動計画を立てるためのツールではない。人生でやりたいことを追求しようとしたときに、どのような行動をとりうるか、そのさまざまな「可能性」を見取り図として示すためのツールだ。

 これはキャリアについての戦略的計画ではなく、人生についての戦略的思考のためのツールである。現在と将来の現実を理解し、複数のやりたいことを満たせる行動が何かを明らかにするのに役立つのだ。

 人生戦略マップは、次の4要素で構成されている。

・やりたいこと
・目標
・行動と障害
・未知のステップ

 マップは、1枚の紙に書く。手持ちの紙には書ききれないなら、もっと大きな紙を用意する。電子ファイルで作成してもいい。ただし、大きなディスプレイのコンピュータを使って、マップ全体を一度に眺められるようにすること。これはとても重要な点だ。

 いまあなたが考えていることを、正直にマップに記入しよう。

 現時点では何を書けばいいかわからないところには、とりあえず「?」と書き込んでおこう。マップの作成は「やりたいこと」「目標」「行動」「障害」の複雑さや困難さに応じて、1時間で終わる場合もあれば、1週間かかる場合もある。あなたの未来が他者の未来と密接に結びついている場合は、その人と一緒にマップを作成してもいい

 このエクササイズは、数年ごとに実施するとさらに効果的だ。とくに、人生やキャリアのターニングポイントにさしかかったときに、自分の人生戦略の各要素を把握するのに役に立つ。

 各要素は、時間の経過とともに変化する。このツールを使うことで、あなたは自分の人生で何をやりたいのか、何ができるのかを定期的に点検できるのだ。

(本原稿はウィリアム・ダガン著『超、思考法』から抜粋して掲載しています。マップの書き方について詳細は同書を参照)

ウィリアム・ダガン(William Duggan)
コロンビア大学ビジネススクール上級講師。フォード財団での戦略コンサルタントを経て、コロンビア大学ビジネススクールで、「第7感」について大学院課程とエグゼクティブコースで教えている。また、世界の企業の何千人ものエグゼクティブに「第7感」について講義を行っている。2014年、学長教育優秀賞を受賞。著書に『ナポレオンの直観』(星野裕志訳、慶應義塾大学出版会)、『戦略は直観に従う』(杉本希子・津田夏樹訳、東洋経済新報社)など。『戦略は直観に従う』が「strategy+business」誌で年間最優秀戦略書に選出されるなど、その独創的で精力的な活動は各界で高い評価を得ている。
児島 修(こじま・おさむ)
英日翻訳者。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。訳書に『やってのける』『「戦略」大全』『勇気の科学』『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』(いずれも大和書房)、『自分を変える1つの習慣』(ダイヤモンド社)、『競争の科学』(実務教育出版)、『ストラテジールールズ』(パブラボ)などがある。