「好きを仕事にしなさい」に従ったら絶対ダメな理由

コロンビア大学ビジネススクールで、人生の歩み方から働き方、日々の意思決定に至るまでの最も合理的な思考法を教える授業が人気になっている。そこで教えられているエッセンスを凝縮したのが話題の書『超、思考法』だ。今回はその内容から「人生をどのように生きていくべきか」がパッととわかってしまう驚きの思考法を紹介する。

その助言に安易に従うと必ず「矛盾」にぶつかる

 あなたは、自分の人生で何をすべきなのだろうか?

 大学の卒業式では、講演者が卒業生に向けてこんなことを言う。

「情熱に従って、やりたいことをしてください」

 だが、それは簡単なことではない。「やりたいこと」には、どれか一つをとれば他が成り立たなくなるような性質があるからだ。たとえば大学を卒業したばかりの人が、やりたいこと、興味のあることとして、「給料の良い仕事に就く」「快適な環境で働く」「音楽」「海外旅行」「年老いた両親の世話」「ノーベル化学賞」「結婚して子どもを持つ」「凧をつくる」などを挙げたとする。

 だが「凧をつくる」という夢を目指そうとしたら、地元のカナダではなく、オーストラリアにしか凧づくりを仕事にできる場所がないかもしれない。そのうえ給料も部屋代と食事代を引くと何も残らないくらい安いかもしれない。その場合、大好きな凧づくりを仕事にしようとしたら、先に挙げた他の夢をすべて実現することは不可能だ。

 つまり私たちにとって、「やりたいことをやれるかどうか」が問題なのではない。問題は、「やりたいことのうち『何を』『いつ』『どのように』実現するのか」だ

 そのとき、私たちに答えを指し示してくれるのが第7感だ(深いひらめきをもたらす脳の力「第7感」については『超、思考法』を参照)。第7感は、いくつものやりたいことと、そのさまざまな実現方法を組み合わせ、凧づくりをするのは無理だという結論を導く。だからあなたはオーストラリアには行かなかった。

 あなたにとって、凧をつくりたいという欲求は、他の欲求よりも小さかった。キャリアアップを目指したり、家族や恋人の近くに住んだり、安定した暮らしをしたりするほうが、凧づくりよりも重要だった。そして、第7感はそれを知っていた。