能力は相対的なもの
まず自分、自社の弱点を知れ

秋山 能力分析と意図分析のつながりはどうなりますか?

上田 例を挙げましょう。まずは能力分析です。

 中国のミサイルの相当数がわが国を射程に捉えています。しかも、核を搭載している。中国は日本を核攻撃できるわけです。島しょに着上陸する能力もあります。

 ここで意図分析をします。中国に上記の能力があるからといって、中国のミサイル攻撃や着上陸に対応する防衛態勢を取ろうとすれば、国家資源は一挙に破綻し、現実的に不可能です。

 だから、現在の情勢下で中国が核攻撃を行う意図があると分析する人はまずいません。もし核攻撃を行った場合は中国はどのような状況に陥るのかなどを総合的に勘案して判断すれば、中国が日本に対して核攻撃を仕掛ける脅威は、現在の情勢下ではほとんどないということになります。

 意図分析では、不確実なものを分析するので、自分のバイアスを排除して、客観的に見積もること、独りよがりにならないこと、多くの人の意見を聞くことが重要です。

秋山 ビジネスの場合にも、脅威の見極めには、まず能力分析が必要というのは重要なポイントですね。

上田 能力分析で重要なことは、能力は相対的なものと知ることです。つまり能力、戦力は相手や状況次第で変わるものなのです。

 例えば、北朝鮮のミサイル攻撃能力は誰を相手にするかによって変わります。北朝鮮はわが国の領土に対してミサイル攻撃を行う能力を有していますが、アメリカは距離も遠く、北朝鮮のミサイルを迎撃する能力も保有しているので、相対的には北朝鮮はアメリカ本土をミサイル攻撃する能力はないということになります。

 また、敵や競合他社を知り、その能力を正しく見積もることも大事なのですが、まず自分、自国、自社の能力や弱点を正しく把握することがなにより先決です。

 自分との比較で、自分の弱点は何か、自分の弱点に対して敵は何ができるのか、もし攻撃された場合、それは自分にとってどのくらいのダメージなのかというのを具体的にシミュレーションすることが大事です。

 孫子の「敵を知り、己を知らば百戦危うからずや」という言葉は有名ですが、まずなすべきは、己を知ることなのです。