情報分析の初心者は
オシントから始める

秋山 徹底的に突き詰めることで、本質的な原因にたどり着くわけですね。

 さて、これまでいろいろ専門的なことも交えて教えていただきましたが、これから情報収集や分析のリテラシーを真面目に身につけようと思っている人がまず、取り組むべきはなんでしょうか。

上田 一次情報の収集です。オープンソースから必要な情報を抜き出して分析するオシント(OSINT、open source intelligence)ですね。

 これまで述べたようなノウハウは教えられますし、本にも書きました。しかし、実際に自分の手を使って繰り返し実践的に使っていかなければ分析は絶対に身につかないのです。

秋山 ありがとうございます。実際に手を動かす経験を作っていく必要があるということですね。では最後に、アメリカの北朝鮮進攻、中国の台湾進攻などの可能性をわれわれがオシントだけで見極めようとした場合、どんな場所や人のどんな情報に注意をしておけばよいのでしょう。

上田 ちょうど対談の復習にもなります。

 まず、アメリカが北朝鮮に侵攻するという状況になるためのシナリオを作ってみます。その道筋に沿って必要な一次情報を集めることになります。つまり、モデルを描いて、その関連するインフォメーションを集める、そのインフォメーションをモデルの中に入れてみる。

 空母の展開、在韓米軍の一部撤退、トランプの強硬発言、缶詰株の上昇などは関連する有力な兆候ですが、これらを漠然とシナリオに当てはめるのではなく、これら兆候がどのようなほかの周辺の事柄と結びついているのか、それはどのようにカテゴライズされるのか、まさにパン屋と肉屋のように、情報を細切れにして、再度組み合わせながら、考えてみるといいかもしれません。

秋山 かなり難しそうですが、とりあえず、ハリネズミ的な評論家の決めつけを鵜呑みにすることだけはやめるのが良さそうですね。少しでもキツネ寄りになるよう、いろいろな可能性を考えたり、今日教えていただいたいくつかの分析手法を思い浮かべながら広い視点でニュースに接することにしてみたいと思います。

上田篤盛 (うえだ あつもり)
1960年広島県生まれ。元防衛省情報分析官。防衛大学校(国際関係論)卒業後、84年に陸上自衛隊に入隊。87年に陸上自衛隊調査学校の語学課程に入校以降、情報関係職に従事。92年から95年にかけて在バングラデシュ日本国大使館において警備官として勤務し、危機管理、邦人安全対策などを担当。帰国後、調査学校教官をへて戦略情報課程および総合情報課程を履修。その後、防衛省情報分析官および陸上自衛隊情報教官などとして勤務。2015年定年退官。近著に『中国戦略悪の教科書 (『兵法三十六計』で読み解く対日工作)』『戦略的インテリジェンス入門』

 

秋山進(あきやま・すすむ)
プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。京都大学卒。リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。著書に『社長が将来、役員にしたい人』『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』などがある。