競合他社に同質化されないため
相手の「強み」を「弱み」に変えろ

 次に、「競争優位」についてはどうか。

 素晴らしいビジネスモデルをもって事業参入しても、競合企業に同質化(物真似)され、あっという間に市場がレッドオーシャン(競争の激しい市場)になってしまう例も珍しくない。

 たとえば、従来は1社専属の営業職員からしか保険は加入できなかったが、複数会社の保険が選べる店頭型保険ショップが1995年に生まれた。しかし、同じビジネスモデルの企業が続々誕生し、今やショッピングセンターには、類似店が溢れ返るようになった。

 またMVNOの仕組みを使った格安スマホも、すでに競争から淘汰の時代に入っている。2017年3月に契約件数が1000万件を突破したが、大手だけでも20~30社がひしめく業界となり、経営破綻する企業も出てきた。

 こうした状況の中、競合他社に同質化されないためには、リソースの裏側にある、(1)競合企業の強みを弱みにする戦略と、(2)競合企業のバリューチェーンの中に入り込む戦略が有効である。

 (1)の強みを弱みにする戦略には、競合企業の企業側に蓄積された「企業資産の負債化」と、顧客側に蓄積された「市場資産の負債化」がある

 (2)の競合企業のバリューチェーンの中に入り込む戦略には、競合企業のバリューチェーンの一部を代替する戦略と、相手企業のバリューチェーンにはなかった機能を付加する戦略がある。

企業資産を負債化したエプソンの
大容量インクタンク搭載プリンタ

 企業資産の負債化の例としては、エプソンの大容量インクタンク搭載インクジェットプリンタが挙げられる。プリンタは本体を安価に提供し、消耗品のインクカートリッジで利益を上げる「ジレット・モデル」の典型例であった。しかしエプソンは、2年分のインクを内蔵した大容量インクタンク搭載インクジェットプリンタを発売し、自らジレット・モデルを否定した。

 インクタンク型の本体は従来品より高価になるが、ある枚数を越えると割安になる印刷枚数の多いユーザーや、大事なときに限って「インクがなくなりました」の表示が出ることに不満を感じていたユーザーは、このプリンタに飛びついた。