作家であり、金融評論家、社会評論家と多彩な顔を持つ橘玲氏が自身の集大成ともいえる書籍『幸福の「資本」論』を発刊。よく語られるものの、実は非常にあいまいな概念だった「幸福な人生」について、“3つの資本”をキーとして定義づけ、「今の日本でいかに幸福に生きていくか?」を追求していく連載。今回は「若者と幸福」について考える。
若者が考えるべき「フリーエージェント」への道
音楽でも映像でも広告でも、取引コストの大きな組織はクリエイター(コンテンツプロバイダー)を抱えることができなくなって、営業マンとブローカーだけの集団に急速に変わっていきます。
その結果、コンテンツを持つ個人や事務所の発言力が高まり、専門性の高い分野では「象の尻尾が胴体を振り回す」ことも珍しくありません。
かつては取り替え可能な「下請け」だったのが、知識社会化によって高度で特殊なコンテンツが要求されるようになり、代えがきかなくなったのです。
プロフェッションを持つ個人(プロフェッショナル)が組織に対して優位性を持つようになることが知識社会の必然であるならば、どうすれば「収益の最大化」と「自己実現」を両立できるのでしょうか。
ここで、その基本戦略をまとめておきます。
(1) 好きなことに人的資本のすべてを投入する。
(2) 好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。
(3) 官僚化した組織との取引から収益を獲得する。
これは空理空論ではありません。日本でも優秀な若者が20代で起業し、ゲームやアプリの開発などを手がけることが珍しくなくなりました。なぜ彼らがこのような道を選ぶかというと、身近な成功体験を知っているからです。