日銀は戦時中も国債を買ったが、現在の額はその比ではない経済規模との対比で考えると、日本銀行が保有する長期国債の額の比率は、第2次世界大戦中よりも現在の方が圧倒的に高い Photo:Everett Collection/アフロ

 日本銀行の金融市場局は、1月9日に超長期国債の買い入れオペを200億円減額した。為替市場では「日銀が金融緩和策の出口に向かって動き始める」との見方が広がり、円高が進んだ。

 しかしながら、そういった市場の解釈は深読みし過ぎの感がある。

 理由としては、第一に、金融政策決定会合の合間に日銀の事務方がオペの金額で政策スタンスの変更を市場に示唆することは、1998年施行の日本銀行法の下ではガバナンス上、無理がある。

 第二に、4月9日以降の次期日銀総裁がいまだ決まっていない今のタイミングで、日銀が政策変更のアクションを取り始めることは考えにくい。

 日銀は2016年秋にイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を開始した。それ以来、10年金利をゼロ%近傍に誘導しつつ、その範囲内で国債の買い入れを減額してきた。今回もその流れに沿ったものと考えられる。

 また、4月から財務省の超長期債の発行額が減るので、それを見越して減らした面もあるだろう。

 日本経済は、海外経済の恩恵を受けて現在好調である。政府内で「デフレ脱却宣言」を行うことのメリットとデメリットが議論されているとの観測も聞こえる。アベノミクスの功績をアピールすることを重視するならば、政府は「宣言」に傾くだろう。しかし、「宣言」すると、19年度の消費税率引き上げを逃れる口実がなくなる。