冒頭の会話に、傾聴を使うとこのようになります。

A課長 「田中君、ちょっと5分だけ時間あるかな?今月の目標まで20%未達だけど、残り1週間でどうやって達成させるつもりなの?」

田中 「ああ、大丈夫です。先日お会いしたお客様はとってもいい反応でしたし、契約は大丈夫だと思います」

A課長 「お客様の反応がよかったことと、契約がうまくいくこととはどのように関連しているのか私には分からないのだけれど、詳しく教えてもらってもいいかなぁ」

田中 「ああ…。確かにそうですよね。僕の中では、お客様の反応がいいので、なんとなく契約に結びつくような気がしてしまっていました」

A課長 「お客様の反応がいいことは、きっと田中君の印象がよかったからかもしれないけれど、それだけではお客様から信頼を得たとは言えないかもしれないね。商品とのマッチングに納得していただいて初めて契約につながるからね。それで、次はいつお会いするの?」

田中 「今日、午後からお約束しています。課長のおっしゃる通り、信頼を得るような会話を心がけて、もっと商品とのマッチングを詳しく話してきます!」

 冒頭の展開とはまるで違った結果を導きました。

最初に「5分くらいいい?」
そして腑に落ちなければ正直に聞く

 最初に、「5分くらいいい?」と聞いたのは、傾聴技法で最初に重要とされるもので、相手に不安を与えないことによって、安心して話をする空気をつくるのです。

 次に、田中さんが話した内容のいくつかのポイントを関連づけて伝え返し、自分がその内容を理解できなかったことを伝えています。これも、カウンセラーがよく使う手法で、課長がいまひとつ腑に落ちなかったことは、正直に相手に聞くことが重要です。

 最後に、相手が次に何をどうしようとしているのかを質問しています。これにより、新たな話が展開していくのです。

 このように、ビジネスシーンにおける傾聴は、「相手との信頼関係を構築することを目的」とした手段にはとても有効なので、ぜひ、管理職の重要なスキルとして磨いてほしいと思います。

(MICA COCORO代表 産業カウンセラー 宮本実果)