紙に書きだすと
脳内でドーパミンパーティーが始まる

 また、扁桃体のすぐそばに報酬を生みだす領域がある関係で、扁桃体は、紙に書きだすことで記憶の定着が高まるメカニズムも司る。感情というものは反射的に生まれる。自分を取り巻く環境の好き嫌いをはっきり示す。

 英単語の一覧で興奮しているフリをして脳をだまそうとしても、脳はそう簡単にはだまされない。英語の「dentist」が「歯医者」だと知って飛びあがって喜びでもしない限り、扁桃体は記憶の強化を働きかけようとはしない。

 「dentist」だろうが「tiger」だろうが、扁桃体にとっては重要ではない。扁桃体に直接アンフェタミンを注入すれば記憶力の強化は望めるが、デメリットを考えるとそこまでする価値はない。

 ところが、思いだせたことを紙に書けば、事態は一変する。脳の判断が伴う行動を起こす瞬間、脳は本腰を入れるべきだと悟る。その結果、何かを思いだすたびに記憶の定着を助ける化学物質が脳内に分泌されるのだ。

 思いだそうとした記憶が脳内で再生され、扁桃体がホルモンの分泌を呼びかけ、海馬がその記憶に関係するネットワークを示し、関係するニューロンがしっかりとつながる。

 思いだそうとしたものをうまく思いだすたびに、脳内の報酬系から報酬としてドーパミンが海馬に分泌され、長期記憶への保存がますます確かなものになる

 要するに、紙に書きだすことで、脳内で記憶を強化する化学物質のパーティーが始まるというわけだ。これでは、退屈な単語一覧を眺める学習に勝ち目はない。

まとめ
・思いだそうとすると、脳内でさまざまな化学反応が起こって記憶を保持する力が高まる。
・見て覚え直すのではなく、覚えたことを思いだす作業に学習時間の大半をあてることで、学習効率が最大限に高まる。
・思いだせるかどうかを自分でテストできるように、単語、発音、文法などのフラッシュカードを自作するとよい。カードに画像や個人的なつながりも含めれば、記憶力の強化を促す土台ができる。