年明けの13日、元フランス経済・財政・産業大臣のクリスチャン・ソテール氏(現パリ市副市長‐雇用・経済開発・国際関係担当)との面談機会があり、「ポスト3.11の日本」と「国際都市の競争力強化」について、考えを伺いました。「社会と経済と文化」「歴史と未来」「ハードとソフトパワー」などバランスのとれた大局的な見地から、多くの専門家の見解とは一味違う答えが返ってきましたのでご紹介します(なお、揺れる欧州の行方についても非常に興味深い見解を得ましたが、これは別の機会に紹介します)。

日本研究の第一人者
~日本に学ぶべき点は多い

クリスチャン・ソテール氏(写真右)と筆者。本文で紹介した他にも同氏の日本関係の著書としては、「Japon : le prix de la puissance」(日本――その経済力は本物か、1973年)、「Les dents du géant」(孤独な巨人ニッポン――欧州がとらえた日本経済の死角、1988年)、「L'Etat et l'individu au Japon」(日本における国家と個人:樋口陽一氏との共著、1990年)などがある

 クリスチャン・ソテール氏は、シラク大統領時代のジョスパン内閣で、1997年から2001年にかけ、財務担当副大臣、そして経済・財政・産業大臣を歴任した経済通です。さらに日本研究の第一人者としても知られ、たとえば1976年には、EHESS日本研究所を創立。社会科学分野において世界的に評価の高い学者を多く輩出するフランス国立社会科学高等研究院(EHESS)における日本研究の体制を整えました。

 日本研究の著書も多数あり、なかでも僕が個人的に好きな一冊に、日本がバブル崩壊後の失われた10年に苦しんでした1996年発刊の「La France au miroir du Japon : Croissance ou déclin(フランスは日本の鏡:成長か衰退か)」があります。

 これは、グローバル化する資本、オートメーション化する生産現場、拡がる情報ネットワーク革命、台頭する新興国などの潮流により、停滞する経済と深刻化する社会問題を抱える先進諸国…こうした中、唯一日本は、失業も含め社会問題にうまく対応しており、フランスは、その背後にある日本の社会経済モデルに学ぶべき点が多いと解説するものです。