NTT東日本社長 江部 努
撮影:ミヤジシンゴ

 かつて、日本の通信は、世界で最も料金水準が高く、スピードも遅かった。だが、1990年代後半以降にインターネットが急速な発展を遂げたことで、さまざまなサービス競争が起こった。

 その結果、日本は、(使い放題の)定額制料金が当たり前になり、今では世界で最も料金が安く、またスピードも速い国になった。

 たとえば、米国の大手通信キャリアのベライゾンやAT&TとNTT東日本の状況を同種のサービスで比較してみると、よくわかる。

 昨年12月時点で、固定電話の加入世帯に占める光ファイバーのカバー率は、ベライゾンが17.4%(1270万世帯)、AT&Tが26.6%(1700万世帯)、NTT東日本は90.4%(2350万世帯)である。電話、インターネット、映像の“トリプルプレー”の価格では、円換算でベライゾンが月額2万2516円、AT&Tが1万4340円、NTT東日本は1万1420円。そしてスピードは、ベライゾンが下り50Mbpsで上り20Mbps、AT&Tが下り1.5Mbpsで上りが1Mbps、NTT東日本は下りも上りも100Mbpsになっている。

 利用者にとって、日本は世界最先端の通信インフラが整った国なのである。NTTは、「光のシェアが高過ぎる」「独占回帰だ」などと非難されるが、他の競合事業者が先行投資に積極的でなかったことも背景にはある。

 正直、そのような本質をもっと理解してほしいという思いがある。私たちは、悪いことをしているわけではないのだから。(談)

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨 仁)