議論すべきは、大きな問いから

 ハーバード大学の教授であり『これからの「正義」の話をしよう』の著者マイケル・サンデル教授は、先日、日経新聞に掲載されたインタビューでこう語っていました。

「具体的に税や年金の制度をどうするのかという技術的な問いではなく、まず大きな問いから議論を始めるべきだ。どうすればより良い社会を構築できるのか、正義や公正さが守られるためにはどうすればいいのかということだ。そうした原点からスタートすれば、(負担のあり方などについて)皆が納得しやすい仕組みをつくることが可能になるのではないか。」(日本経済新聞、2012年1月23日)

 サンデル氏が目指すコミュニタリアニズムには全面的に賛成ではない私ですが、「まず大きな問いから」という姿勢には全面的に同意します。

 橋下市長が府知事時代に作成した「教育基本条例案」にも、何度か「より良い教育」という文言が出てきますが、何をもって「より良い教育」と言っているのかが、いまひとつイメージできません。それと同様、ぜひ目指すべき「より良い社会」とは何か、ということを明確に打ち出してもらいたい。そして、まずそれに市民、有権者、また“バカ学者”と言われた私のような評論家が賛同できるかどうかを議論することで、橋下市長が行おうとしている改革が有益なのかそうでないのかが、見えてくるのではないでしょうか。

 大風呂敷を広げても意味はない、と言われるかもしれませんが、もし「次」という議論の機会があるのなら、「まず大きな問いから」でいかがですか、と申し上げたいです。