グローバルで活躍するために必須の教養

 大盛況で幕を閉じた西洋美術史セミナー。改めてその企画意図を、セミナーを企画した全日本空輸株式会社・人財戦略室ANA人財大学担当部長の青山弘樹氏に伺った。

 「当社では、グローバルで活躍できる人財として、『世界とたたかい、よく知られ、愛される』という人財像を思い描いています。この人財像に近づくための取り組みとして、2014年からリベラルアーツ講座を開催してきました。学ぶ分野は歴史・宗教・政治・科学・スポーツ・芸術の6つ。単なるビジネススキルばかりでなく、これら6つの教養を学ぶことで、世界中の人に『よく知られ、愛される』人財が育つと考えたのです。

 西洋美術史については今年度(2017年度)から取り入れました。初回終了後の受講者アンケートでも『絵の背景や意図を理解することによる楽しみ方を学ぶことができた』『美術史の内容だけでなく、教養の大切さを実感することができた』などといった声が目立ち、狙い通りの反響だと感じています」(青山氏)

 「世界中のお客様によく知られ、愛される人財・企業になるためには、さまざまな国や地域の歴史・文化・宗教を学ばなければならない。西洋美術史を学ぶことにより、芸術を深めるきっかけになるのではないかと感じた」と語る青山氏。来年度以降も木村氏による西洋美術史セミナーを続けていく考えだという。

ANAが社員に「西洋美術史」を学ばせる理由3時間にわたるセミナーでは、講師の木村氏が美術品181点を丁寧に解説した

 実際に受講した社員はどのような感想を抱いたのだろう。お話を聞かせてくれたのは、同社空港センター品質管理部品質管理チームの山田陽子氏だ。

 「受講したきっかけは、もともと絵画が好きだったことですね。特に印象派の絵画が好きなのですが、今回は印象派に限らず、幅広く西洋美術について学べるということだったので応募しました。

 内容は期待をはるかに超えたもので、感動しました(笑)。これまでは海外の美術館に行っても、もともと興味のあった印象派の絵画は鑑賞を深く楽しむことができたのですが、自分にとって馴染みのないキリスト教が土台となっている古典の絵画は、その背景がわからず、漠然と眺めるだけで終わってしまっていて、もったいなさを感じていたんです。今日の木村先生のお話しで、自分に足りなかった知識や視点を補うことができて、とても嬉しいです」(山田氏)

 すべての話が面白く、3時間があっという間だったと山田氏は話す。西洋美術史セミナーは今後の仕事にどう活きてきそうか。手応えを聞いてみた。

 「私の仕事は今のところ社内業務が多く、今回のセミナーがすぐ、日々の仕事に直結するとはいえないかもしれません。ただ、これから今まで以上に美術館での楽しみ方が広がることで、一社会人として魅力的な人間になることにつながればと感じます」(山田氏)