“老前破産”に至る家庭が増えている。
日本弁護士連合会が発表した「2014年破産事件及び個人再生事件記録調査」によれば、自己破産がもっとも多いのは40代(27.02%)、ついで50代(21.05%)が続き、自己破産の約半分を働き盛りの壮年が占めている。自己破産理由を見ると、「生活苦・低所得」がおよそ6割を占め、「浪費・遊興費・ギャンプル」は1割弱にすぎない。過度な贅沢や無駄遣いをしたわけでもないのに、破産してしまう例も少なくないということだ。
とはいえ、いわゆる「普通」の生活をしているだけで、自己破産に至るとは考えにくい。そこになにかしらのきっかけがあるはずだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏は、著書『老前破産 年金支給70歳時代のお金サバイバル』(朝日新書)のなかで、老前破産の実態に迫っている。例えば、住宅購入をきっかけに、老前破産寸前にまで至ってしまった人のケースを紹介しよう。
53歳の山田辰夫(仮)さんがマンションを購入したのは、1999年35歳の時。当時の年収は420万円で、妻と4歳の長男、2歳長女の4人家族で2LDKの賃貸アパートに暮らしていた。手狭な自宅に悩んでいたところに目にしたのが不動産の広告。“頭金ゼロ、返済額は家賃並み”のキャッチフレーズにひかれ、いざとなったら売却できるという営業マンの言葉も魅力的だった。そして、池袋まで30分の私鉄駅から徒歩15分の3LDKマンションを、3500万円で購入した。
広くなった自宅に満足して暮らしていた山田さんだが、風向きが変わり始めたのは購入から10年が経った頃。変動で借りていたローンの金利は2%から4%に。月々の支払いはおよそ1万7000円上がり、ボーナス払いも15万円上乗せされた。一方で、購入時には増えると目論んでいた給料は、長引く不況で期待したほどは上がらなかった。