「AIがすべての産業を変える」と言われるが、話が複雑そうでわかりにくい。しかも、いまさら聞けない空気がある!というわけで、AIの分野で日本をはじめシンガポールなど諸外国でも活躍する若者、株式会社ABEJA・岡田陽介社長に、記者・夏目がAIのイロハを伺った。(経済ジャーナリスト 夏目幸明)
「AIが人類を滅ぼす」日は
本当にやってくるのか?
夏目 ドラえもんにちょっと怖い話があるんです。彼が大嫌いなネズミを見つけて取り乱しちゃって、マッドネスな表情で「地球はかいばくだん」を取り出すんですよ。
AIはいま、人智を超えた力を持とうとしているイメージがあります。イーロン・マスクやビル・ゲイツも「AIが進化して人類を滅ぼすのでは」と警鐘を鳴らしています。そこで専門家に聞きたいんですが、AIが人間を攻撃する未来って考えられるんでしょうか?
岡田 結論から言えば、AIはまだ人間の「道具」に過ぎません。AIが自我に目覚め、意図を持って人間を攻撃する事態は、当面、心配しなくていいでしょう。AIは、囲碁や将棋など「ルールが決まった閉じられた世界」でなら実力を発揮してくれます。でもAI自体が「世界をよくしよう!」などと自分で目的を設定するなんてことは、現段階の能力ではできないんですね。
夏目 でも、AIが囲碁や将棋で世界最高峰の実力を持つ人間を打ち負かすって怖くないですか?しかもAI同士で戦って、人間が見つけられなかったような定石を見つけたりしているんですよね。簡単に人間を超えられそうじゃないですか。
岡田 それは「脅威」ではないのでは…?
よく考えてみてください。そもそも人間は今までも、自分たちより遥かに高い能力を持つ道具を使いこなしていますよ。例えば自動車。人間より遥かに速く走りつつ、重い荷物も運べます。エクセルだって、人間より遥かに速く、正確に計算結果を出してくれます。
夏目 うーん、それはわかるんですが、人間の能力の中でも知的能力を上回られちゃうのって怖くないですか?なんか、今までにない犯罪とか起きそうな気もしますし。
岡田 ええ。テクノロジーの発展により新たな犯罪が起きる可能性があるという点は同感です。その場合、AIそのものが「悪」なのではなくて、悪用するのは人間ですけどね。だから私は、AIの取り扱いに関する新たな枠組みが必要だと考えています。