「用心棒AI」は
Gmailでも使われていた!?
岡田 例えばGoogleが提供しているGmailを使うと、迷惑メールっぽいメールはあらかじめ、迷惑メールフォルダに入れてくれますよね。
夏目 ああ、たまに必要なメールまで迷惑メールにされちゃうアレですね。メールの返信を忘れたときに「迷惑メールに分類されちゃって」とか言い訳に使ってます(笑)。
岡田 (笑)。必要なメールまで迷惑メールにされてしまうのは、AIが「迷惑メールかもしれない」段階で弾いているからです。迷惑メールに分類されたら「迷惑メールじゃないよ」と教えてあげ、逆に迷惑メールが届いたら「これは迷惑メール」と教えてあげるとAIが賢くなりますよ。
夏目 なんと、あれもAIでしたか!わかってきましたよ。ドス持ったヤクザがウチに来たら「用心棒AI」が玄関で止めておいてくれる、というようなシステムですね。AIは柄が悪そうに見えるいい人が来ても止めちゃうけど、ドス持ったヤクザを通しちゃうよりいいでしょ?と。
岡田 まあ、ざっくり当たってます(笑)。
冗談はともかく、実は私、懸念があるんです。日本では、サイバーセキュリティに関する製品が売れていないんですよね。
夏目 何でなんですか?
岡田 アメリカやイスラエルの政府や企業は、セキュリティに関する意識が非常に高いんです。攻撃にさらされるリスクが日本より高いのかもしれません。しかし、日本の企業にも間違いなく必要ですよ。もし夏目さんが言うような「AIをサイバー攻撃に悪用する」というケースが登場したら、人間には防御できない可能性が高いので。
夏目 「アルファ碁」のようにAIは世界最高峰の人間を破っちゃうわけですからね。
岡田 そうなんです。現在、セキュリティに使われている暗号は、複雑な計算式を使って、法則性がそう簡単にはわからないようにしてあります。コンピューターが解読を試みても何百年もかかるから、事実上安全だよね、という仕組みです。しかし、量子コンピューターが登場し、AIが試行錯誤を繰り返せば、現在の暗号は数秒で解読可能になる、と言われています。
私は「AIの脅威」を感じるなら、AIが人間を滅ぼすことより、セキュリティを破ろうとするAIに対しての防御を考えるほうが現実的だと思います。そして米国やイスラエルでは、AIでセキュリティを守ろう、と考えるベンチャーが既に登場しています。私はセキュリティ対策に乗り遅れることが、日本の危機にならないことを願っています。