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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

東大9月入学論議はコップの中の嵐
問われるべきは教育の密度だ

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第54回】 2012年2月22日
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 私は彼に、何故東大を中退したのかを訊ねた。彼は素直に言った「時間の無駄だった」。学生は勉強しないし、授業から学べるものも少なかった。こんな生活を送っていては世界水準に置いてきぼりにされるのではないかと、焦りを感じたと。この理由は良く分かる。

日本の大学とアメリカの大学、
教育密度の圧倒的な差

 筆者の経験から推しても、日本の大学とアメリカの大学とでは教育の密度が違う。MITでの大学院生活は高校生時代に逆戻りしたようなものだった。宿題と試験がある上に、予習が大変である。授業が終わると、次回授業までに読んでおかなければならない文献を山ほど渡される。文献は一冊の本であることは稀で、指定された章とかページとかであるが、これを読んでおかないと次回授業についていけない。次回授業は読んだことを前提に始まるからだ。

 しかも、一学期の成績の平均点がB(日本の「良」に相当)を下回ると即時退学になる。Cを取ったらAを取って挽回しなければならない。息が抜けないのである。だから金曜日の夕方には一息入れるためにパーティーで発散する。土曜日には寝溜めをする。日曜日は次の週の準備に取り掛かる。図書館は、準備に追われる学生で一杯になる。図書館に寝袋を持ち込んで仮眠しながら24時間勉強している学生もいる。

 先述のスタンフォード教授は、学力格差は大学からではなく高校から始まっていると指摘される。米国にはAP(Advanced Placement)と言う制度がある。高校が大学の教養課程レベルの授業(AP)クラスを設け、そこで優秀な成績を取れたら、大学入学後に大学の単位として認められる制度だ。各科目に4段階ぐらいのレベルがあり、理数系の得意な生徒は数学、物理、化学、生物の各レベルを集中して取り、最上級レベルのAPに挑戦する。

 一流大学は受験生のAPの取得状況を見て合否を決める。進学率の高い高校ではAPを教える先生を置いている。昨年APを取った学生は全米で180万人に上るという。高校の一学年の就学生は約400万人だから相当な比率になる。伸びる子はどこまでも伸ばしていこうとする、実にアメリカ的な制度だ。この結果、日米の一流大学のトップクラス同士で入学時学力を比較すると、日本は米国に2年ぐらい遅れているのではないかと同教授は推測される。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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