彼女もやはり、勉強はできるけど、日常生活がうまくできない。子育てや家事もうまくできなかった。しかし、星野医師の著書を読んで「あ、私は、これだ」と思ったという。

「ADHDとアスペルガー症候群に該当します」と、星野医師が告げると、彼女は「85年間の人生の謎が解けました」とホッとして、すっきりした表情になった。知能検査をしたところ、結果を表すIQは135と、平均知能指数100に比べて非常に高いこともわかった。

「小・中・高校までは、勉強のできる人が多い。人間関係も大学までは、マイペースでも問題にならないんですね。ところが一旦、社会に出ると、同僚や上司、クライアントとの人間関係が不器用で、時間や金銭、私物管理、感情コントロールなどもできなくなるんですよ」

 こうして仕事がうまくいなくなると、職場で孤立して、出社できなくなり、新たな大人の「引きこもり」の増加にもつながることになる。

「深刻なのは、大人の場合、ほとんどが合併症を示していることです。ADHD80人、アスペルガー50人を診たところ、合併症のない人は、わずか13.8%でした。ほとんどの方は、うつ病、不安障害、依存症、パーソナリティー障害などを示していました。とくに、新型うつ病系といわれる、仕事をするときだけ元気がなくなる人たちや、自己中心的で、人を責める人たちです。治りにくいうつ病や、アルコール、ギャンブル、買い物などの依存症の人は、発達障害の疑いがあると、ようやく最近、注目されるようになりました」

 米国ではすでに90年代から、こうした合併症の研究が進められている。しかし、日本ではまだ、これからという状況だという。

「たとえば、うつ症状の人に、現在の状況だけを聞いてもわからない。私は児童精神科を37年間続けてきました。35歳の方なら、“子どもの頃は、どうでしたか?”と、35年間のヒストリーを聞きます。多動傾向、衝動傾向、不注意傾向…。ADHDの症状は、とくに小学生の頃の様子を聞くと、わかりますね」

 星野医師によると、子どもの頃から、ADHDやアスペルガーの症状はある。中・高校時代、不登校になって、大人になると、うつ病や依存症になった。それを「重ね着症候群」と呼ぶそうだ。

 特徴的なのは、大人になってから、「仕事中毒になりやすい」ことだという。

「彼らは子どもの頃から、自己不全感を持っています。セルフイメージが悪くて、劣等感を持っているんですね。自分があまり好きになれないから、仕事をしているときに充実しているんです。また、アルコール依存症になる人の約7割は、仕事中毒なんですよ。昼間、しっかり仕事をして、夜になると、飲み屋で飲んでいるんです」