YMR-01の実用化に当たって
“精密農業”を掲げるヤマハ
産業用ドローンの開発競争が激しくなってきた。重量物の運搬、農薬散布、空中からの監視など、いまやドローンの用途は多岐にわたっている。玩具のドローンが小型ビデオカメラを搭載する時代だけあって、産業用ドローンのレベルは極めて高い。日本の自動車関連企業は、この分野でも存在感を発揮している。
ヤマハ発動機は昨年、自社開発した産業用マルチローターのプロトタイプ機、YMR-01を農業関係の展示会で公開した。2基の回転翼(ローター)が互いに反対方向に作動して機体の安定性を確保する2重反転ローター2基と、通常のローター4基を組み合わせた6軸8ローターという構成で、用途は農薬散布。2重反転ローター付近に農薬噴射ノズルを設置し、合計8基のローターによる下降気流で「ドローンの飛行経路の直下に農薬をまんべんなく散布でき、作物の根元まで均一に薬剤が行きわたる」という。
なぜ、ヤマハ発動機がドローンなのか。それは、もともと同社が産業用無人ヘリ製造の老舗だからだ。過去の実績は多岐にわたり、潜水艦攻撃用魚雷を抱えて護衛艦から発進する無人対潜ヘリのような特殊分野もこなしてきた。1987年から農薬散布用無人ヘリを製造しており、ドローン分野参入は「狭い耕地の多い日本では、無人ヘリでカバーしきれない場所にニーズがあるため」だ。また、無人ヘリは価格が高いので農協が購入し共同使用するケースが一般的で、個人のニーズには応えられていないという。