「3.11」被災者のPTSDが7年目に増えた理由

2011年3月11日に起きた東日本大震災から8年目となる今年、原発事故の処理と被災地の復興が徐々に進むそばで、被災者が受けるストレスの状態は地域によって異なる。住宅無償提供や賠償金の打ち切り、いじめに苦しむ福島と、徐々に回復しているそれ以外の地域だ。震災後のPTSDを研究する、早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也教授に話を聞いた。(ダイヤモンド・オンライン編集部 松野友美)

賠償の打ち切りまで
残すところあと1年

 2011年3月11日に起きた東日本大震災から7年経った今年3月、いまだ7つの市町村にまたがった地域で、立ち入りや宿泊制限が続いている。震災による避難者数は、約7万3000人にのぼり、避難先は全国1054の市区町村に広がっている(復興庁2月27日発表)。

 こうした状況下で、ここから1年は住居や賠償金に関する一つの転機になる。というのも被災者の生活の要となる住居と賠償金の交付期限が近づいているからだ。

 福島県による仮設住居の供給は、当初、3月で打ち切りの予定だった、しかし、対象となる九つの市町村・区域で、一律1年間の延長が決まり、期限は来年3月末までに延長された。一方で、避難指示区域外から自主避難した人への県による住宅無償提供は、昨年3月末で打ち切られている。

 東京電力による賠償金は、主に「家賃」「農林業」「精神的(慰謝料)」があるが、これらも徐々に期限を迎える。「家賃」については、避難指示に従って仮設住宅ではなく賃貸住宅に入居した人たちへの賠償が、3月で一旦終了する。ただ、県の仮設住宅供給の延長と格差を生じさせないように、賃貸住宅入居者に対しては今年4月以降に新制度(東京電力から福島県への50億円の寄付)が設けられて、家賃の補償は1年間延長されることが決まった。

 家賃補償以外の東電による賠償は、対象区域とその期間により異なる。「精神的賠償(慰謝料)」とする計750万円(月額10万円)の支払いは、対象となった大熊町と双葉町の全域と、帰還困難区域で17年5月までに完了している。それ以外の避難区域に対する精神的賠償計850万円(月額10万円)は、全て3月で完了することになっている。

 帰還困難区域の約2万5000人は、精神的賠償として、これら以外に追加で「故郷喪失の慰謝料」700万円が支払われた。しかし、この対象に漏れた人たちの中で「ふるさと喪失慰謝料」を求めて、前橋、千葉、福島、東京の各地方裁判所で集団訴訟が提起され、3月には東京と京都の両地裁で判決が下る。

 このように、被災者をめぐる環境が複雑化する中で、被災者は一括りにはできなくなっている。そこで、震災後の心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder 、PTSD)を研究する早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也教授に話を聞いた。