20年続くかもしれない賠償訴訟
8年目の今だからできること

──責任の明確化も、賠償金の問題も、解決への道は長くなりそうです。

 20~30年は続くと思います。今、全国で原発被害者の集団訴訟が行われています。しかし、地裁によって国の責任を認めたところと、認めなかったところが分かれています。国が控訴し、最高裁判所までいけば20年くらいはかかってしまうでしょう。

 判決が出る頃には、原爆訴訟のように訴訟当事者がいなくなっているということもあり得るでしょう。また、恐らく10年後くらいには、原発事故による健康被害が訴訟のテーマになってきます。放射能汚染と避難生活のストレス、新たな健康被害が賠償に加わる可能性もあり、問題はより複雑化していくでしょう。

──「3.11」から8年目に入る今、福島の人たちのためできることはなんでしょうか。

 一番は、被害がなぜ起きたということ、そして彼らがどういう状況なのか、賠償金をもらっている人はなぜもらっているのかということを知らなければいけません。人生をひっくり返されたり、故郷を失ったり、故郷が変貌した償いとして賠償金が支払われていて、決して贅沢しているわけではないということを知らなければならないのです。

 また、賠償金をもらっている人同士の仲も、複雑になっていることを理解するべきです。みんな大規模事故の被害者だという理解をすることが、絶対に必要だと思います。

 そして、避難計画がきちんと策定されていない状況で、原発の再稼働が認められてしまっている現実に、もっと目を向けてほしい。原発事故の発生直後は避難シミュレーションをかなり真剣にやっていましたが、結局、おざなりになったまま再稼働しています。

 これは、社会的にものすごく大きなリスクを抱えたまま、目の前の電力を得るために目をつぶってしまっているということです。せめて同様の事故が起きた時にどんな避難をするのか、地域が一つになり、近隣の県などとも協力して対策を講ずるべきなのです。リスク対策は、研究者や行政だけでなく、社会のリーダーシップを取っている企業の人たちにも取り組んでほしいです。それが、日本の将来を潰さないための責任だと思います。

辻内琢也(つじうち・たくや)
早稲田大学災害復興医療人類学研究所所長。1967年生まれ。1992年浜松医科大学医学部卒業。1995年阪神淡路大震災にて被災地医療に従事。1999年東京大学大学院医学系研究科・ストレス防御心身医学終了。博士(医学)。2003年早稲田大学人間科学部助教授。2004年千葉大学大学院社会文化科学研究科(文化人類学)単位取得退学。2011年東日本大震災後は原発事故被災者に対する心身医学・人類学的調査を行うと共に、震災支援ネットワーク埼玉(SSN)運営委員として支援活動に従事。2013年ハーバード大学難民トラウマ研究所(HPRT)リサーチフェロー。2014年より現職。2016年早稲田大学人間科学学術院教授。