ですので、私と同じようにザックリとした性格の方はご安心ください。
 しっかりとお金が増える家計をつくるうえでは、“こまめさ”はじつは必要ありません。
 連載タイトルでは「家計」を謳ってはいますが、「家計簿」は必須条件ではないのです。

 とはいえ、いま家計簿をつけている方は、ほんとうにすばらしいと思いますので、ぜひその習慣を続けてください。

 きちんと働いて収入を得て、保険料を払い、生活費をやりくりして節約しつつ、できるだけ多くの額を預金に回す──日々の賢いやりくりは、健全な家計をつくるためのベースです。節水・節電に取り組み、スーパーのチラシをちゃんとチェックして食材を安く買い、スタバの代わりにセブン-イレブンの100円コーヒーで我慢……。

 浮いたお金をトータルすればある程度の金額になるでしょうし、貯蓄額が膨らんでいくのを見ていれば、きっと達成感もあるでしょう。

 ただし、これだけでは不十分です。家計簿などを使って「出ていくお金を減らす」ための努力は貴重ですが、「残ったお金が増えていく」ためのしくみが手つかずのまま放置されているからです。

過去のお金を凝視しても、未来のお金は見えない

 これは「会計」と「ファイナンシャル・プラニング」という分野の違いに由来します。
 大まかに言えば、会計とは「過去」に起こった金銭活動をきちんと事後整理する仕事です。これに対し、ファイナンシャル・プラニングとは「将来」に起こるであろう金銭活動を大づかみに把握し、計画を立てるための知恵です。

 将来のことは誰にもわかりませんから、会計に比べるとファイナンシャル・プラニングは細かい数字にこだわらない/こだわっても仕方がないという側面があります(「お前と一緒にするな!」という専門家のみなさん、すみません……)。
 ひとまずここでは、どちらもお金を扱う分野でありながら、アプローチは真逆なのだということを押さえておいてください。

 鋭い方はお気づきでしょうが、家計簿とは「過去に起こった金銭活動の記録」です。
 いくら収入を得て、それをどのように使ったか/貯めたか、というお金の出入りを月次サイクルで見るのが家計簿です。これを見れば、「月々の電気代がいくらか?」とか「先月は食費が浮いたなあ」とか「交際費がかさんできているぞ……」といったことがわかります。

 でも、いくら丁寧に家計簿をつけても、どれほどじっくりと家計簿を眺めても、次のような数字は把握できません。

 ・いま、うちにはいくらの預金があるか?
 ・ローン返済はどれくらい進んでいるか?
 ・子どもの将来の学費は工面できそうか?
 ・今度の夏休みは海外旅行に行けそうか?

 なぜ把握できないかと言えば、これらはすべて家計の「いま現在」や「これから」に関わることだからです。家計簿には「これまで」のお金のことしか書かれていませんから、これ単独では家計の未来を考えるツールにはなり得ないのです。

「将来的にお金の心配をしないで済むようになりたい!」と思っているみなさんには、家計簿とはまったく別の考え方が必要になるというわけです。