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気鋭のフューチャリストが語る
破壊的技術革新の時代のマネジメントとは

堀田栄治
【第91回】 2018年4月9日
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「未来の顧客」を知るためには
8歳の子どもの経験を知るべき

――「未来を考えることは、破壊的技術を発明するのではなく、それによって人がどんな経験をし、どのように変化をしていくのかを考えることだ」というウォルシュさんの主張は、技術立国日本にとって、非常に耳の痛い話です。日本企業は破壊的技術の開発を志向しながらも、何故それができなくなったのでしょう。

 未来をつくる破壊的技術は、新素材を開発したり、製造プロセスを改善するところではなく、「規模」から生まれるということです。膨大かつ多様なデータを収集し、それを分析する機械学習のアルゴリズムを持たないといけません。

 日本はものづくりにおいて、世界に冠たるエクセレンスを培ってきましたが、ある意味、閉鎖された、安全な環境でイノベーションを進めてきたと思います。しかし、データやアルゴリズム、ソフトウエアの世界がグローバル化するなかで、日本企業ももっとグローバルに、そしてオープンにならないといけないでしょう。

 中国もどちらかというと、閉鎖された環境にありますが、13億人を超える人口がアドバンテージとなっています。そこから創出される膨大なデータを自動運転やロボティクス、AIといった技術に活用することが可能です。規模で劣り、さらに人口減少が進む日本は、外部と協調・連携することによって、マーケットをスケールアップしていかないといけないのです。

――「未来の顧客は何を期待するのか?」。これを知るために「いまの8歳の子どもたちの体験を知るべきだ」という意見は非常にユニークでした。彼らが20歳を迎える2030年には、どのような消費行動を取るようになるのでしょうか。

 未来の顧客は、生まれながらにしてAIなどの革新的技術によって、消費行動が形成されていきます。したがって、彼らは自分たちの行動やデータに基づいて、よりパーソナライズされた商品・サービス、ユーザー体験を企業に求めるようになるでしょう。これまで企業は、世代をひと括りにして、どのような商品を開発するかを考えてきたと思いますが、これからは個人一人ひとりに対して、どういうサービスを提供していくのかについて考えていく必要があります。

――ソフトバンクの孫正義氏は、2050年の顧客がハッピーになることを予測して、いまビジネスを行っていると指摘されていました。未来戦略と足元の経営戦略の時間軸のずれについてどう考えるべきですか。

 私はそれを、「デュアルホライズン・プロブレム」と呼んでいます。未来の地平が2つあるという意味ですが、たとえば自分が船の船長だとしましょう。南方のパラダイスに向けて航海しつつも、目の前には嵐が来ていて、それをなんとか乗り越えないといけない。船長の心の中には、パラダイスと嵐という2つの矛盾するゴールが存在するわけです。この2つを乗り切るスキルが21世紀の経営者には求められます。長期的にはパラダイスのようなゴールに賭けていかないといけないし、短期的には戦術的な調整も必要です。

――「いまの子どもたちの体験を知るべき」に関連して、社内の若いメンバーから学ぶことや、新卒採用した社員に、自社の仕事のやり方、意思決定の仕方、コミュニケーションの在り方について、変だと思うポイントを指摘してもらうよう提言されていましたが、日本企業ではなかなか難しそうです。アドバイスをお願いできますか。

 それでもやってください、ということですね(笑)。上司の顔をつぶさないような、上手な聞き方ややり方があるはずです。プロジェクト化するとか、ワークショップを導入するとか、もちろん、外部のコンサルタントに入ってもらって、その役割をお願いすることもできるでしょう。いずれにせよ、未来を担うのは若い社員や新入社員なのですから、彼らに学び、未来の仮説を常に検証していく必要があります。

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