加計学園問題で、愛媛県の面会記録に「首相案件」と書かれていたことが大騒ぎになっている。しかし、実は「首相案件」という言葉は、政治や行政の世界では正当な理由でよく使われるもので、決して「首相がお友達に便宜を図る」というような、“真っ黒な案件”を指すワードではないのだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)
「首相案件」という言葉が
示す本当の意味とは?
柳瀬唯夫首相秘書官が来週にも、国会に参考人招致されるらしい。
柳瀬氏といえば、4月10日に「朝日新聞」が一面にデカデカと打った『面会記録に「首相案件」』報道のキーマン。財務省改ざん問題の佐川宣寿氏と同様、マスコミや野党からの厳しい集中砲火が予想される。
愛媛県職員が面会したと主張しているのに、「記憶にありません」で突っぱねている柳瀬氏にはぜひとも、国民の理解が得られるような説明をしていただきたいと心から願う一方で、件の「首相案件」で叩かれる点のみは、同情を禁じ得ない。
既にさまざまな識者が指摘しているように、「首相案件」とは、首相が自らのリーダーシップを用いて、政策を進める時に使われる。今回、四国の獣医学部新設は、震災復興の特例措置でつくられた東北医科薬科大学を除くと、38年ぶり医学部新設となった国際医療福祉大学と同じく、文科省の岩盤規制を、国家戦略特区というスキームを使って突破する「首相案件」である。
仮に柳瀬氏が自治体へアドバイスをする際に、こういうもの言いをしてもなんの問題もない。さらに言えば、このような打ち合わせをおこなった愛媛県職員が、備忘録にメモをするというのも極めて納得のいく話だ。
そういう目くじらをたてる必要のない言葉について、「加計学園だけにこっそり便宜をはかる秘密計画を指す言葉が、首相案件なんだろ!さあ、吐け!」と、犯罪者のごとく厳しく追及されなくてはいけない柳瀬氏の苦痛は察するにあまりある。