全国各地に、神出鬼没に現れる「立ち喰い梅干し屋」。立ち食いそばでも、立ち食いおでんでもなく、立ち食い梅干し。さまざまな梅干しを日本茶と一緒にいただくというこの店は、出店するたびに人が押し寄せ、休日には長蛇の列ができるという。一体なぜ、人々は梅干しに並ぶのか。その謎を、企画運営会社「BambooCut」の代表、竹内順平氏に聞いた。(清談社 中村未来)

3週間で5000人が来店!
人気の秘訣はどこにあるのか

梅干し常時15種類もの梅干しを用意している「立ち喰い梅干し屋」。3週間で5000人など、驚くほど繁盛してきた

 昨年8月下旬、東京ソラマチに期間限定でオープンした「立ち喰い梅干し屋」には、3週間で約5000人もの人が訪れた。これまでもメディアにも数多く取り上げられ、今年1月にはTBS「マツコの知らない世界」に出演したことで、さらに注目を集めた。梅干しにスポットを当てた理由を、竹内氏はこう語る。

「豆腐がおいしいのは、みんな知ってると思うんですよね。漬物がおいしくていろんな種類があるのも知ってると思います。それに比べて、梅干しがおいしくて、たくさん種類があることって、あまり知られていないんですよ。日の丸弁当はみんな知っているのに、その中心にある梅干しの種類は答えられない。“知っているのに、よく知らない”というのが、梅干しに興味を持ったきっかけでした」(竹内氏、以下同)

 竹内氏が大学時代の同級生とイベントプロデュースの会社を立ち上げたのは、2014年のことで、「立ち喰い梅干し屋」のプロジェクトも同時期にスタート。15年、表参道ヒルズに初出店した際には、2週間で4000人もの人が訪れた。「立ち喰い梅干し屋」のほか、「にっぽんの梅干し展」と銘打った梅干し特化型イベントも幾度となく開催し、15年にはフランスでの展示も成功させた。

「ありそうでなかった非日常感を体験したい人たちが集まるんです」と竹内氏は言う。

「よっぽどの梅干し好きではない限り、意識的に梅干しを食べようと思うことって、ほぼないと思うんです。でも、目の前に、幻の梅『杉田梅』、老舗吉田屋の『石川一号』、ご飯にぴったり『なちゅら』といった梅干しが並んでいたとしたら、ちょっと食べてみたくなりませんか?」

「立ち喰い梅干し屋」には、常時15種類(詳細はこちら)の梅干しが用意されている。値段は400円程度。カウンターで好きな梅干しを注文し、それぞれの梅干しに合う日本茶と一緒に味わう。一粒一粒、味わいや風味がまったく異なる梅干しを口にし、客は驚愕するのだ。

「客層は幅広く、10代後半~60代までさまざまな年齢層の方に来ていただいています。ソラマチや渋谷ロフトといった立地の影響もあり、多くは女性のお客さまですが、1人でふらっと立ち寄るのは、やはり男性のお客さまが多いです。過去には期間中、毎日通ってくれたビジネスマンの方もいらっしゃいました」(同)