「パワハラ勘違い上司」を論語はどう戒めているか

これまで2000社以上の指導を行ってきた経営アドバイザー・田口佳史氏の新刊書『超訳 論語 「人生巧者」はみな孔子に学ぶ』の中から、ビジネスの役に立つ論語を「超訳」でわかりやすく解説する。今回の論語は、上司の傲慢なふるまいが、いかに部下の信頼を失い恨みを買うか、という戒め。

威張り散らす上司から部下は逃げる

君子の徳は風なり。小人(しょうじん)の徳は草なり。草之(くさこれ)に風をくわうれば必ず偃(ふ)す。

部下が気持ちよく働ける職場環境にすることを心がけなさい。そうすれば、風が吹いて草がなびくように、部下は自然と上司の言葉を受け入れるようになる。(顔淵第十二/298)

 俗に「上司風を吹かせる」というと、威張り散らして、部下をアゴでこきつかう上司の様子をイメージする。そんな“上司風”は願い下げだ。部下は風に煽られて、あらぬ方向に逃げ出してしまうだけだ。

 同じ風でも“君子風”はいい。いかにもさわやかな感じがするではないか。部下も地に根をおろし、喜んで風に吹かれるままになびいてくれるだろう。

「“君子風”を吹かす」とはつまり、部下が快適に働けるように、心づかいをしてあげること。上司が部下の幸せをサポートするお世話係に徹していれば、言葉にして命令せずとも上司の思い通りに動いてくれる。わざわざ権威を振りかざして威張り散らさなくても、自然と敬意を表してくれる。

 上に立つ者が吹かす風は、“先輩風”も“亭主風”もすべからく“君子風”をモットーとされたし。