4月1日から東電の企業向け電気料金が値上げされ、当然ながらメディア上では東電への批判が目立ちます。値上げに至るまでの東電の対応のずさんさを考えるとそれも当然ですが、ある意味で東電以上に批判されるべきは経産省であることも忘れてはいけないのではないでしょうか。
東電の対応はひどい
今回の値上げに当たっての東電の対応は非難されて当然です。通常1年の契約期間満了までの間は値上げを拒否できることを説明しなかったことはもちろん、値上げが必要である根拠も十分に説明しているとは言えません。
例えば、石油や天然ガスの輸入コストが増大するのはやむを得ませんが、為替レートが前回の料金改定時の水準(1ドル107円)のままなのか、原油や天然ガスの価格をいくらに設定しているのかも不明なままです。
17%という大幅な値上げを強いる以上は詳細すぎる位の根拠を示すべきなのに、それを怠っているというのは、東電が未だに独占的な地位(自由化された企業向けでも94%のシェア)にあぐらをかいているか、詳細なデータを公表すると不都合が生じるからのどちらかしかありません。
そして、何より問題は、まだリストラが不十分なのに値上げを強行したということです。東電のHPには10年間で合計3兆3000億円のコストダウンが明示されていますが、それが本当に最大限のリストラと言えるのでしょうか。
例えば、人件費についてみると、一般社員の給与は2割しかカットされておらず、りそな銀行に公的資金が投入されたとき(3割カット)より甘いのです。
また、コストダウンの内訳を見ても、3兆3000億円の8割がフロー(毎年の経常経費)のコストカットで、ストック部分のリストラはまったく不十分です。東電が法的整理(破綻処理)の道を選んでいれば、既存株式(時価総額で3000億円)、金融債権(3兆8000億円)のカットのみならず、核燃料再処理などのための引当金(3兆7000億円)の多くも取り崩せ、その場合にはストックの部分で数兆円以上のリストラを行えるはずです。
政府から公的資金を合計3兆5000億円も受け取りながらリストラは不十分、そして値上げに関する説明もまったく不十分であるにもかかわらず、17%もの値上げを行うというのは、やはりおかしいと言わざるを得ません。